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第9次岸和田市政白書づくりをすすめるために大阪自治体問題研究所と岸和田市職員労働組合が共同で設立した岸和田市地域調査研究会が、2000年11月に「財政問題」に関してまとめた中間報告です。

第9次岸和田市政白書 財政問題中間報告 1

はじめに

1章 「長期債務累積」型財政危機と地方財政対策
  1節 地方財政全体としての財政危機の現局面
  2節 地方財政危機の背景と本質
  3節 国の財政対策の概要と展望

2章 財政健全化を市民とともに
  1節 市当局による財政健全化の取り組みと問題点
  2節 岸和田市財政危機の原因
  3節 財政健全化への提言
  4節 市民参加で財政健全化をすすめる

 はじめに 

 1997年10月第8次岸和田市政白書『ともにいきるまち岸和田−民主市政の24年間の総括と展望』を発刊した。第8次白書では岸和田市政に対していくつかの課題を示した。とりわけ財政運営の変貌の危惧と民主的な財政運営への方向、まちづくりにおける住民要求を踏まえた意志決定システム構築などである。それらの課題を引き継いで現在第9次市政白書づくりを進めているところである。

 今回の第9次市政白書も社団法人大阪自治体問題研究所と岸和田市職員労働組合が共同で設立した岸和田市地域調査研究会をもとに取り組まれ、2001年8月を目途にまとめる予定である。それに先立って第9次市政白書の3つの課題のひとつである「財政問題」に関してここに中間報告を取りまとめた。

 当初の予定では財政問題に関する中間報告は岸和田市の財政を住民、岸和田市、国の三者を住民自治を基盤にした行財政システムの中に位置付け、広い観点で基本的な自治体財政の在り方を示す構想であった。しかし、2000年10月に発表された岸和田市による『財政健全化3カ年アクションプラン−平成13年度に向けて−』(以下『アクションプラン』と呼ぶ)は、人件費抑制、福祉施策の削減、住民負担の増大など、さまざまな歳出削減と歳入確保が盛り込まれており、多くの自治体で進められている自治体リストラの性格を色濃く打ち出している。さらに同時に発表された財政推計では、前回の1999年10月に出された財政推計の財政再建団体転落年度より早い、3年後の2003(平成15)年度に財政再建団体転落ラインとなる実質収支の赤字が予測されるという内容が示された。

 従って、本中間報告は第1に地方財政全体としての地方財政危機の背景と本質について述べ、第2に『アクションプラン』を視野においた財政問題に関する緊急提言の性格をもつものとなった。 本中間報告の一貫した視点は1980年代の第二次臨時行政調査会(略称として「第二臨調」と呼ばれる)による行政改革から始まる国家財政の危機を地方財政に負担を肩代わりさせ、加えてバブル崩壊後の景気対策のために地方財政が動員され、それに追随した地方自治体と国の責任の所在を明らかにすることである。

1.第9次市政白書における財政問題の考え方

 前述のように本報告書の性格を述べたが、ここで第9次市政白書における財政問題の考え方を示しておきたい。本研究会では財政問題を決算額の分析に見られるような結果としての財政問題の捕らえ方から、住民生活の現状から出発する住民要求に基づく予算要求の作成、予算編成過程とその過程における住民・行政・議会の意志決定システム、執行後の決算に対する住民への説明、さらに次なる住民要求の集約という財政システムの循環過程を調査のねらいとしている。財政問題に関する住民参加、その前提となる情報公開、意志決定過程の透明性などの岸和田市における可能性を探っている。しかし、現実の財政状況を抜きに議論を組み立てることはできない。従って現在まで、第1に財政の数値的分析(数値的分析は前回白書よりの継続課題である)、第2に岸和田市の総合計画と財政との関係、第3に財政担当部門における現状認識と運営の考え方、第4に財政情報の公開を含む情報公開の現状の調査を行った。現在第5の取り組みとして住民要求の反映を含む予算編成過程の現状を調査中である。さらに次の取り組みとして住民団体に対して財政問題に関するヒアリングを予定している。

2.財政問題の本質

 岸和田市財政の現状は新しい財政システムの構築、地方分権を視野においた行財政システムへの転換をめざす財政健全化対策を行うには遅きに失している。健全化チームの設置目的と『アクションプラン』に見られるように当面の収支ギャップを埋めるという緊急避難的な措置で今回の財政危機の解決を図ることはできない。『アクションプラン』の財政推計の歳出に計上されている項目には見直しの余地がある。例えば普通建設事業費の一般財源の充当率は1990年代後半の水準を維持し見直しの余地がある。さらに普通建設事業費の削減目標額5億円の対象事業は事業内容を含め精査が可能である。補助費等に計上されている阪南2区新設工場建設のための経費、繰出金内訳額なども同様に見直しの余地がある。

 『アクションプラン』の内容を固定化し一つのプランしかないと押し付けるのではなく、これらの見直しを含めた幾つかの『アクションプラン』を用意して市民の前に明らかにし、市民が複数の選択肢をもとに議論し選択できる民主的な手続きによる財政健全化策を作成すべきである。なぜなら第3次総合計画の市民アンケートに見られるように、市民ニーズは「開発から保全」「ハード施策からソフト施策」へと意識の変化が現れている。岸和田市当局が選択肢を絞るのではなく市民ニーズに沿った幾つかの財政再建計画が求められている。その場合、本報告でも指摘した岸和田市の財政運営の特徴に見られる国の財政誘導策に準じている「安心感」、景気回復は国の役割であるという認識に基づく景気動向に対する認識不足、関西国際空港建設と開港に起因する泉州の自治体間競争の激化など財政状況の判断を遅らせた原因を、市民に明らかにする必要がある。

 財政問題の本質的な解決の方途は、当面の対策と将来の対策を市民とともに考え、住み続けられるまち、住み続けたいまち岸和田を築いて行く将来を見据えた地道な努力以外にない。そこには地方分権の推進と税源移譲の問題も含まれている。

 民主市政のもとで『アクションプラン』の手法に見られる行政主導の内部的財政再建策による一時的解決ではなく、今回の財政危機を絶好の契機と捕らえ市民と一緒に財政問題を考える機会として位置付けることを期待している。本報告書と第9次市政白書は以上の観点から作成され、また作成する予定である。

 この中間報告に対するご意見、ご質問は、岸和田市職員労働組合までお寄せいただきたい。 またお忙しい中、調査にご協力いただいたことを感謝申し上げる。

2000年11月
(社)大阪自治体問題研究所
岸和田市職員労働組合

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