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第9次岸和田市政白書 財政問題中間報告

2章 財政健全化を市民とともに 

 3節 財政健全化への提言 

 では、どのように市財政を健全化していくのか考えている原則を次に述べることにする。

(1)何のため、誰のための健全化か

 財政健全化は何のためにやるのか、原点に戻って確認する必要がある。自治体とは何か、という問題である。言うまでもなく、自治体は住民の暮らしと営業を支える役割をもっている。それが本来の姿である。この大目標を実現することが行政の目標であり、財政の健全化はその手段である。

 市民の暮らしを向上させるために、市の財源は市民の生活や営業に直接効果のある施策に使わなくてはならない。市民の生活力を維持・向上することが結果として財源基盤を強くすることにもつながる。そのために必要なら緊急を要さない事業は例え進行中といえども緊急避難的に中断する勇気もいる。

(2)「赤字の回避」「収支ギャッフの克服」について

 この点に関連して、岸和田市の健全化策の最大目標である「赤字の回避」「収支ギャップの克服」についての考え方である。市は財政赤字を回避し、財政基盤の安定を図ることは市政運営の基本だと述べている。『アクションプラン』でも同プランが収支ギャップを補てんする具体的な取り組みであると述べている。赤字財政にしない、まして財政再建団体に転落するほどの赤字を回避することが財政運営の一つの課題となることは現在の地方税財政制度のもとではやむをえないだろう。しかし、「赤字・黒字」については基本視点をしっかり押さえておかなければとんでもないことになりかねない。「名誉の赤字、不名誉の黒字」という言葉がある。自治体財政はもともと住民の暮らしと営業を守るためにある。国との関係で自治体にとって圧倒的に不利な今の税財政制度のもとでは住民のための仕事にカを入れればどうしても経費、とくに経常経費が大きくなり、赤字になってしまう可能性が強い。しかし、福祉・教育・環境などの住民向けサービスを拡充したために仮に赤字が生じたとしても、それは名誉の赤字といえるのではないか。逆に住民負担を重くし、住民サービスをどんどん切り下げて黒字にしてもそれは不名誉の黒字となるのではないか。「名誉の赤字、不名誉の黒字」とは、そのことを意味している。けっして赤字であってもかまわないとか、黒字にしなくてもよいというわけではない。しかし、自治体財政とはそもそも何のためにあるのか、という根本的な問題を忘れてはならない。岸和田市が収支ギャップの克服を目標とするのは否定しないが、将来展望として自治体財政の本来の姿を忘れると、職員と住民に一方的に犠牲を強いる自治体リストラにならざるをえない。

(3)分権的税財政システムの実現をめざす

 1990年代に岸和田市財政がこれまでの健全かつ堅実さを忘れたのは、国が今の自治体税財政のしくみを利用してさまざまな統制・誘導をはかってきたことに最大の原因がある。歳出は「国が4割、自治体は6割」であるにもかかわらず、税収は「国が6割、自治体が4割」と逆転しているため、国から自治体へ地方交付税や国庫支出金が交付される過程で国による支配・統制・誘導が加えられる。地方債の発行も国に権限を握られている。

 こうしたしくみがあるからこそ、自治体は財政力を上回る借金までして公共事業を進める誘惑に引きずられたのである。くり返すが、決して「活用」したのではない。だからといって自治体が自らすすんでおこなった責任はもちろん無視できないが、このしくみこそ地方自治・住民自治を損ねる元凶である。もとはと言えば、自治体に歳出に見合うだけの権限が与えられていないところに問題の根源があるのである。「地方に税源を」、分権的税財政システムの実現がどうしても必要である。岸和田市もこの立場に立つべきだ。小手先の対応で解決できるものではない。

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