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冬季集中講座
   ― 自治体改革の争点

 当研究所主催で2002年2月1日に行われた冬季集中講座(54名参加・ホテルくれべ)の内容をご紹介します。

(文責 織原 泰)

1 迫りくる市町村合併と自治体再編
          大阪市立大学教授 加茂利男

2 破綻した財政をどう再生するか
          大阪教育大学助教授 森 裕之


 

1 迫りくる市町村合併と自治体再編

大阪市立大学教授 加茂利男

小泉「構造改革」の現局面

 新世紀の幕開けは騒然たるものになった。同時多発テロによって世界秩序が変わった。そして、日本では「改憲」を公然という小泉首相が登場し、市場主義と強い国家づくりををめざす「構造改革」が押し進められている。しかし、昨年は山家悠紀夫氏をはじめ本格的な「構造改革批判」論者も登場し、国民世論も「改革より雇用」をという意見が6割をしめるようになった。

「構造改革」と市町村合併

 市町村合併は自治体の空間的再編といえるが、総務省は強烈な圧力で「自主的合併の強制」、いわば「自白の強要」といえるようなかたちで全国を駆けめぐって合併を推進している。強力な財政誘導策も働いて、昨年9月段階で1615の合併協議会等(任意や研究会も含む)ができ市町村数の半数に及んでいる。それは「バスに乗り遅れるな」という異様さで全国首長アンケート(共同通信)でも63.8%の首長が合併を検討している。

 他方では小泉「構造改革」に賛成しない首長も4割弱にも上っている。地域活性化のために合併が必要であると考えている首長はわずか5.6%しかいないという矛盾もかかえている。その意味では流動的な側面もある。

 昭和の大合併は新制中学の設置という切迫した下からの動きもないわけではなかった。今回の合併は、「介護保険のため」という総務省の説明はあるが、今の介護保険のサービス水準では必ずしも合併は必要ではなく、むしろ交付税削減が目的であるといってよい。

「平成大合併」の論理と現実

 総務省は合併の必要性をさまざまに説明している。「自治能力向上=新しい時代の基礎的総合行政体づくり」をあげているが、地元に住み地域感覚をもった職員たちが、真鶴町の「美の条例」をつくったように、現実はむしろ小さい自治体の方が、地域の実態をふまえたすぐれた行政を展開している。「受益と負担の一致」もあげているが、つまり一定規模以上の自治体を合併によって、自主財源比率を向上させるということであるが、自主財源比率の低い農山村自治体をつくりだしてきたのは戦後の高度成長政策に責任があるのであって、そこに配分される交付税は農山村の機能維持のために全国民的に使用されている。

 また、国は合併により財政効率が向上されるとしているが、財政学者の研究では30万人を超えるとむしろ効率が下がるとされている。総務省が想定している自治体像は、具体的にいうと面積1500平方キロメートルの地域に3万人の人口しかいない(北海道ニセコ町周辺の合併パターン)という荒唐無稽なものである。

 現在の合併パターンが現実化すると、合併特例債が10年で400兆円に上るという説もある。自治体関係者では借金した方がとくというモラルハザードを生み出しかねないという状況もある。合併が実現すると、経済圏が拡大し新たな公共事業が拡大し、新たな「土建国家」の再来という事態も想定される。いずれにしても、今回の合併強行策は「国策」としてもつじつまが合わないことが多すぎるし、明らかにまちがっている。

民営化と公共部門の縮減

 合併がヨコの再編成とすれば、NPM(ニューパブリックマネジメント)による公共部門の改造は、自治体のタテの構造的再編成といえる。つまり、政策立案部門と事業実施部門を分離させ、後者を民営化させるというものである。あわせて公務員制度改革を行い、成績主義の導入など民間並みの処遇にし、身分を流動化させようとするものだ。公共部門をできるだけ縮減しようとする動きと軌を一にしていることを見逃してはならない。

新しい芽や流れ

 しかし、こうした国の強力な合併強行策の中でも、上尾市の住民投票の実施、福島県矢祭町議会の「合併しない宣言」決議や山口県下松町など、もう一つの流れが着実に芽生えている。全国町村会も国土保全の観点から農山村の活性化を強力に打ち出し、合併に反対している。こうした流れの中で自治体問題研究所の出版物が現場で読まれている。こうしたもう一つの流れを住民の力でつくりだしていくことが重要だ。


 

2 破綻した財政をどう再生するか

大阪教育大学助教授 森 裕之

自治体財政の状況

 小泉内閣になってから急速に地方財政危機が進行している。国・地方総計の長期債務残高は01年度末で666兆円であるが、そのうち地方分は188兆円に上っている。また、地方財政計画における地方財源不足も14.2兆円にもなり、さまざまな財源補填措置がおこなわれている。このような状況は持続可能な財政運営ができなくなっていることを意味する。すなわち、単純に計算すると666兆円の債務と毎年の税収3兆円を比べると返済に222年かかるという深刻なものとなっている。

財政破綻を招いた原因

 景気悪化による国税の減少は、地方交付税の財源減少へとはねかえって影響している。地方税の面では大都市県都道府県の法人関連税の減収も大きい。90年代以降の景気対策による公共事業の拡大も財政悪化の要因としてあげられる。

 財政破綻の背景には、国の法令等による自治体への歳出統制がある。つまり、自治体の判断でコントロールができない経費が多いのである。また、「公共事業複合体」とも表現できる政官財の癒着による土建型財政構造も問題である。

財政再建の考え方

 財政再建の目的は、たんに収支合わせではなく、「自治体財政の使命」を果たすことである。自治体財政の使命とは、住民生活を守る社会的生活条件の整備と地域経済条件の整備の二つである。再建の際には、自治体のもつ人材と財源を最大限、効率的に活用することがもとめられる。また、近年不況による失業者の増大、階層間格差の拡大などによる地域社会の不安定化や分裂を緩和するために、自治体の基礎的サービスの充実が不可欠であり、その役割は自治体しか果たせない。

財政再建の方法を探る

 自治体財政の再建は家計の再建と同じで、歳出を削減し、歳入を増加させることである。歳出面では前述したように国による歳出統制によって、削減できない部分が大きいが、民間委託できる部分、たとえば首長の公用車をタクシーにするとか、住民生活に影響のない部分での民営化も検討する余地があろう。すべての分野で「民間委託反対」では住民の不信感を減らせない。また、住民の協力も不可欠で、とくに自発的な協力をもとめることが必要である。歳入面では、課税自主権の活用が試みられてもよい。とくに法定外目的税の検討が必要である。三重県の産廃税、河口湖町の入漁税などが事例にあげられる。

 財政再建団体から脱出した赤池町の事例で、注目されるのは住民の役務の提供など自発的な協力があった。

自治体財政再建のための戦略

 第一に自治体がすぐれた公共サービスの効率的な提供することが大前提である。日本は国際的に国民負担率が低いにもかかわらず、租税負担感が大きいのは、税金の使われ方がよくないからだ。公共事業の肥大で、生活の豊かさが実感できない使われ方がされている。

 第二に住民の協力が不可欠である。日本の社会においては伝統的地域コミュニティが機能してきて、治安の良さ、介護負担の軽減など、結果として財政支出が低くなっている。
全住民が社会に貢献できる機会の提供、参加の成果のビジュアル化することによって、自治意識の向上もはかれる。こういう視点が必要である。

 最後に、先に述べた課税自主権の活用とあわせて、中長期的には財源移譲−所得税の地方移譲、都市自治体と農村自治体の連携が必要である。

上記、行事での当日配布のレジュメ・資料等、及び報告集等について必要な方は、(社)大阪自治体問題研究所までお問い合わせください。

ただし、残部数の関係でご希望に添えない場合もあります。また有償によるものもありますので、ご承知おきください。
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