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第8回小さくても輝く自治体フォーラム in 綾町 ―第2期の運動は「実践型住民自治」で―

堺市職員労働組合自治研部長 中村晶子

九州で初めての開催、知事もあいさつに

 2007年2月3日から2日間、第8回小さくても輝く自治体フォーラムが、過去最多となる66人の町村長が呼びかけ人となり、北海道から沖縄まで全国から457名の参加者を迎えて、宮崎県綾町で開催されました。

 綾町は、宮崎市から西に約20?の位置にある中山間地域で、日本有数の照葉樹林地帯が広がる恵まれた自然環境のもと、「自然生態系農業」「手づくり工芸」「スポーツ合宿」など特色を活かしたまちづくりで知られています。綾町の前田穣町長は、合併せず自立を選択した九州地区の自治体でつくる「九州地区自立町村ネットワーク」の会長をつとめていることなどから、九州地区ではじめて「小さくても輝く自治体フォーラム」が実現することになりました。

 初日の全体会では地元前田綾町長に続き、1月の知事選に勝利した、就任ホヤホヤの話題の人、東国原(ひがしこくばる・そのまんま東)知事が「住民自治を基本として、宮崎を生まれ変わらせたい」と歓迎のあいさつを行い、会場を沸かせました。

夕張問題をとらえなおし、「実践型住民自治」での再生を

 初日全体会では、藤原宏志氏(みやざき住民と自治研究所理事長)による「綾町の自然生態系農業と村づくり」のお話の後、保母武彦氏(自治体問題研究所理事・島根大学名誉教授)による「小規模自治体にとって『夕張問題』とは何か―小さくても輝く自治体運動の『第2期』へ―」と題する記念講演がおこなわれました。

 講演では、各マスコミで「過大な観光開発」「放漫な財政運営」など、センセーショナルに取り上げられている「夕張問題」について、現地での調査にもとづく分析をふまえて、(1)国・道の責任にふれずに全責任を市に取らせる「自治体『自己責任論』のモデルづくり、(2)夕張の財政再建団体の姿を「見せしめ」に、自治体破たん法制の合意形成、(3)夕張の「全国最低水準の行政サービス」によりナショナルミニマムの切り下げを狙う、などの3点を指摘され、「夕張問題」は夕張の問題であると同時に夕張だけの問題ではない、と指摘。その上で夕張の再生は、「行政請負型」から「住民参加(主体)型」に転換して、まちづくりの実践を住民が担う「実践型住民自治」として推進することが必要だとされました。

 そして、「小さくても輝く自治体」運動の第2期の課題として、行政と住民との「顔の見える関係」を活かし、「実践型住民自治」による住民参加型相互協力社会の再生を提言されました。

 続いて、「地域力を向上させる」「行財政改革と地域づくり」「財政基礎講座」の3つの分科会に分かれて更に議論を深めました。

 2日目は、宮原孝一氏(「九州地区自立町村ネットワーク」事務局長)から、長期的な課題と当面の課題に分けて分科会をつくり、九州地区の自立町村が相互交流をはかりながら自立のための政策づくりをおこなっている「九自ネット」の取り組みについて報告。続いて、榎本武利氏(鳥取県岩美町長)より住民参加と情報公開を重視した協働のまちづくりの実践について報告がありました。

 次に、中嶋信氏(徳島大学総合科学部教授)より「地域づくり・もうひとつの未来―環境共生と住民参加―」と題する講演がおこなわれ、「骨太の方針」で粗暴な経済システムが拡大し、集権型政治システムが真の住民参加を排除していく中、ご都合主義の「協働」やNPMではなく、豊かな公共領域を育てるため、「参加する住民」が育ち、政策と運動の力量を高めることで自律戦略の基盤が高まるとされました。

 最後に、全ての参加者で「国の財政責任をあらためて確認し小規模自治体の良さを生かした住民協働の取り組みを広げよう」としたアピールを採択し、フォーラムを終えました。

都市と農村との真の協働めざして

 大阪自治体問題研究所を中心に結成された「なにわ応援隊」は今回7回目となり、住民・地方議員・自治体労働者など16名の参加がありました。恒例となった夜の独自交流会では、兵庫県福崎町の嶋田町長、沖縄県与那国町の浅海邦弘さん、長野県地方自治研究センターの和田蔵次さんといった多彩なゲストを迎え、研修制度の充実など民主的自治体職員づくりに力を入れながら、情報公開を徹底し、住民本位の施策選択でまちづくりをすすめている福崎町や、Drコトー診療所で有名な与那国町比川地区のまちづくり計画などを話題に、夜を徹した議論がおこなわれました。

 この間、「なにわ応援隊」は、(1)合併や地方交付税問題など地方構造改革を小規模自治体だけの問題にしない、(2)大阪府内の自治体の自立政策づくり、(3)「都市と農村の交流」を通じて小規模自治体の豊かな実践に学び、都市における住民参加のシステムを展望する、などの課題を意識しながら、フォーラムに参加してきました。

 今回、保母先生、中嶋先生からはフォーラム第2期の運動として、「実践型住民自治」や「参加型地域づくり」が提起されました。このことは、小規模自治体だけの課題ではなく、21世紀の地方自治を切り開く、都市と農村共通の課題として位置づけていく必要があります。

 また、「財政基礎講座」で、集中的に議論された「新型交付税」の問題では、2007年度より公債費を除く基準財政需要額の約10%が新型交付税需要額として算定される形で導入され、今後3年間で3分の1程度が新型交付税に移行することが計画されています。人口と面積を基準とする新型交付税では、人口が多く可住地面積が広い都市部に比べて、人口が少なく森林面積の広い農村部が不利であり、「都市と農村の格差」がますます大きくなります。しかし、問題はこれだけではありません。これまで地域の実情に応じた測定単位や補正係数が設定され、一定の説明責任が担保されていたのに対して、新型交付税は算定根拠が曖昧であるため、国の財政事情などにより削減が容易になります。

 一方で地方分権をとなえながら、財政面では新自由主義的中央集権を一層すすめる動きに対して、都市と農村の協働によって立ち向かっていく必要があります。

 次回の「小さくても輝く自治体フォーラム」は、6月23日〜24日の日程で、香川県三木町で開催されます。大阪自治体問題研究所を中心に「なにわ応援隊」への参加の輪を広げると同時に、小規模自治体の「応援」だけでなく、都市部での地方交付税問題や住民参加の仕組みづくりの議論と実践を重ね、都市と農村による真の協働の運動をめざしましょう。

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