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公益法人改革とその問題点について

弁護士・城塚健之(当研究所理事)

1 公益法人改革とは

 2006(平成18)年5月、公益法人改革三法が成立し、明治以来続いてきた公益法人(社団法人、財団法人)に関する法制度が抜本的に変わることになりました(平成20年度までに施行予定)。

 法人とは、団体を法律行為の主体として認めるもので、明治以来、民法では公益法人、商法(会社法)では会社、などという形で制度化されてきました。公益法人は、公益活動を目的とする法人で、設立には主務官庁の「許可」が必要とされ(民法三四条)、多くは行政の外郭団体として設立されてきました(もちろん、それだけではなく、たとえば財界団体である日本経団連や、大阪・京都・福岡の自治体問題研究所なども社団法人です)。

 新法はこうした公益法人制度を抜本的に改め、(1)配当を目的としない非営利の社団又は財団については、公益性の有無にかかわらず、届け出だけで法人格を取得できることにし(これを「準則主義」といいます。一般社団・財団法人法)、(2)一般社団・財団の申請により、内閣総理大臣又は都道府県知事が、民間有識者からなる委員会の意見に基づき、公益性を認定すれば、税法上の特典を与えるというものです(公益法人認定法)。あわせて、既存の社団法人・財団法人の新制度への移行手続なども定められています(整備法)(1)

2 新法下での既存の公益法人の運命は

 大阪自治体問題研究所のような既存の公益法人は、法施行後5年間の移行期間内は、「特例社団法人」「特例財団法人」(特例法人)として存続します(整備法四〇条)。この移行期間内に、「特例法人」は次のいずれかを選択することになります。

(1) 行政庁(内閣総理大臣または都道府県)に、公益性の認定を申請する(整備法四四条)。この場合には、行政庁は、内閣府に設置される「公益認定等委員会」または都道府県に設置される「合議制の機関」に諮問します(公益法人認定法四三条、五一条)。
 公益性を認定されれば税法上の優遇措置が受けられます(ただし詳細は未定です)。

(2) 行政庁に、「一般社団法人」「一般財団法人」への移行認可申請する(整備法四五条)。
 (1)の申請が却下された場合には、(2)の申請をしなければなりません。(1)の公益性認定、(2)の一般法人への移行認可のいずれもないまま、移行期間を経過すれば、「特例法人」は解散とみなされます(整備法四六条)。

3 政府の説明

 公益法人制度改革を謳った「公益法人制度の抜本的改革に関する基本方針」(平成15年6月27日閣議決定)では、「民間非営利部門は、……行政部門や民間営利部門では満たすことのできない社会のニーズに対応する多様なサービスを提供することができる。その結果として民間非営利活動は、社会に活力や安定をもたらすと考えられ、その促進は、21世紀の我が国の社会を活力に満ちた社会として維持していく上で極めて重要」であり、「民間非営利部門を我が国の社会経済システムの中に積極的に位置付け、その活動を促進するための方策を講ずる必要がある」ところ、「近年に至るまで、一般的な非営利法人制度がなかったため、時代の変化に対応した国民による非営利活動の妨げになっていた」とされています。
 それにしても非営利団体のこの持ち上げぶりはいったい何なのでしょうか。

4 本当の理由は新自由主義の要請

1 新自由主義は、行政コスト削減を求めるため、行政の別働隊として機能していた外郭団体(その多くは公益法人)の整理縮小を要求します。また、民間企業と競合する分野については、非営利の公益法人の存在は自由市場の阻害要因となります。現在の公益法人数は国所管で約7000、都道府県所管で約1万9000とされていますが(2)、これを整理する必要があります。

2 新自由主義は、社会の多くの領域を市場原理に巻き込みますが、社会活動のすべてをこれで包摂することはできません。不採算であるため営利企業が進出せず、行政もカバーしないという空白地帯が広範に生み出されます。だからといって、これらの領域がまったく放置されれば、それは社会の不安定要素となります。このような間隙を埋めるために、人の善意をあてにした民間非営利活動が求められています。これまでも、民間非営利活動を行う団体に法人格を与えるものとして、NPO法人、中間法人が制度化されてきましたが、今回の改革は一般的な制度とするものです(なお、今回の改革で中間法人は廃止されますが、NPO法人は存続します)(3)

3 さらには、あらゆる団体が容易に法人格を取得できるようにすることは経済活動の活性化にも資すると考えられます。

4 他方、行政の周辺に存在する特殊法人や公益法人は、「談合、天下り、政治献金」といった強固な利権構造を有していて、批判の対象となってきました。上記閣議決定にはこうした批判を受けとめるかのようなくだりも出てきます。しかしながら、公務員制度改革の文脈では、天下りを自由化する(事前規制を撤廃して事後の行為規制だけにする)というのですから、これらの批判をまじめに検討して制度設計しているわけではありません。

5 結局、新たな制度は、非営利法人の法人格取得を容易にする一方、公益性の認定を厳格にすることで、税法上や社会的信用などの特典を得られる領域を制限し、自由市場に対する阻害要因とならないようにしたものと考えられます。

5 予想される問題点

 このような公益法人改革によって以下の問題発生が懸念されます。
(1) 公益性認定が困難な特例法人の社会的地位・信用低下。
(2) 公益性取得が困難な特例法人に対する課税強化による大規模なリストラ。
(3) 暴力団や犯罪集団も含めた悪質団体が容易に法人格を取得できるようになる(規制はすべて被害が具体的に発生した後の「事後規制」となってしまいます)。
 今後、さまざまな問題が発生することが予測されますので、対応を検討しておく必要があります。


(1)新法の概要及びこれに至る経過については行革推進本部「公益法人の改革について」http://www.gyoukaku.go.jp/about/koueki.html 参照。
(2)総務省「公益法人データベース」http://www.koeki-data.soumu.go.jp/
(3)新自由主義におけるNPOなど民間非営利団体の位置づけについては、中西新太郎「リアルな不平等と幻想の自由」(竹内章郎ほか『平等主義が福祉をすくう』青木書店、2005年)参照。

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