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「ソラダス」(NO2測定運動)の取り組み ―これまでの成果と第5回目について

大阪から公害をなくす会事務局長 林 功

「ソラダス」とは?

 市民の手による環境監視活動をいっそう強化しようとソラダス実行委員会発足のつどいが12月に開かれ、来年2006年5月18〜19日の「二酸化窒素(NO)簡易測定運動」準備が本格的にはじまりました。大阪では「ソラダス」と愛称され、今回のソラダスは、6年ぶりに府域すべての地域で測定しようと呼びかけているものです。

これまでの取り組み

 大阪の府域をすべて網羅した大規模なNOいっせい測定運動は、1978年からはじまり5年ないし6年ごとに取り組まれ(第2回84年、第3回89年、第4回94年、第5回2000年)、汚染実態、被害実態を住民の手で把握し、行政を動かしてきました。

 汚染濃度の測定は、大阪府域の面的ひろがりと特徴を明らかにする『メッシュ測定』と、道路沿道など地域の特性をみる『自主測定』があります。測定には「天谷式」と呼ばれる小さなカプセルを使います。前回は、1万5000個のカプセル(メッシュ用8731個、自主6275個)が普及され、測定準備やカプセル取り付け作業に参加した人は、総計約450団体7000人に及びました(「2000年度(第5回)大阪NO簡易測定運動調査報告書」参照)。

汚染実態の解明 ―行政へ少なくない影響を与える

 メッシュ測定は府域1キロ区画(大阪市内は500メートル)ごとのカプセル濃度平均値を求め、NO汚染の分布状況を明らかにしてきました。大阪市域の高濃度汚染が改善されないまま、開発がすすむのにともなって周辺地域に汚染が広がっています。図示すると一目瞭然です。こうした傾向は、毎年発表される国や府、自治体の環境白書などで明らかなことですが、市民の手による全域を網羅し継続した測定によって、地域間の比較、経年変化、局地汚染の実態などがより鮮明に浮かび上がり、世論の喚起と大気汚染行政に少なくない影響を与えてきました。

 自主測定は、環境教育の一環として活用されるとともに、これまで、公園内と周辺地域の比較、地下街の地上・地下同時測定などの創意ある運動も行われました。今日では、自主測定運動は日常的に取り組まれ、山岳地域の測定などにもひろがっています。道路沿道地域の汚染実態や開発地域のきめ細かい汚染状況を住民自らの目で確かめ把握して、行政交渉や自主環境アセスメントにも活用されています。

 自らの手でデータを握って離さない私たちの大気汚染公害をなくし公害被害者を救済する運動は、公害被害者による裁判闘争なども相まって、遅きに失したとはいえ、一定の成果を生み出しつつあります。

 大阪府や大阪市など自治体が常時監視を実施している大気観測局の測定結果は、ここ2年つづけて(2003年、2004年度)、NOでは一般環境大気測定局全局で環境基準を達成し、浮遊粒子状物質(SPM)は一般局だけでなく道路沿道の自動車排出ガス測定局でも環境基準を達成しました。また、NO、SPMともに年平均値や環境基準の上限を超えた日数なども徐々に減少しています。あまりに長い時間を要したとはいえ(ちなみに、政府がNO環境基準を緩和した際に7年後の1985年に上限値を達成すると約束しましたが、その約束は20年以上先送りされたことになります)、NO環境基準の上限値内に汚染を押さえ込むところに到達しつつあり、ねばり強い公害被害者や府市民の運動の反映として確信にしたいと思います。

増えつづけるぜん息患者 ―正念場の大気汚染根絶の取り組み

 しかし、環境濃度が改善傾向にある一方で、ぜん息患者が増えつづけています。2004度にはじめて小学生の罹患率が全国平均で3%をこえ、大阪のぜん息児童の割合は、全国平均をはるかに上回っています(文部科学省の学校保健統計調査など)。また、環境省の公害認定患者現状調査では「5年前との症状比較で計87%が改善しない」と回答、空気の汚れが未だに我慢ならないもの、症状改善の壁になっていることが伺えます。成果が出てきているといっても、大気汚染はまだまだ油断できません。環境基準の正当性が問われます。まさに、大気汚染公害の根本的な解決にむけた取り組みは、これからが正念場です。

 全体の傾向が改善にむかっても、地域によって状況は異なります。きめ細かい環境把握と監視は欠かせませんし、高濃度汚染がつづく道路沿道などの局地汚染対策は待ったなしです。年平均濃度が下ったといってもそれは高濃度の大阪市域の減少によるもので、大阪市に比べ周辺域の改善はなかなか進んでいません。

 NO対策としては、やっと環境基準の上限値が視野に入ってきたところで、下限値にむかう対策はこれからです(NOの環境基準は、旧基準が0.02ppmで、1978年に2〜3倍に基準緩和が強行され、現在は0.04ppm〜0.06ppmのゾーン内またはそれ以下の濃度を基準にしています)。私たちは当面、基準緩和は不当であることを主張しつつ、少なくとも上限値の0.06ppmを超えないこと、ゾーン内の非悪化原則を守ること、すべての地域で0.04ppm以下とするよう求めてきました。

SPM、アスベスト問題も

 SPM(浮遊粒子状物質)も、環境基準が達成されたとはいえ、より細かい粒子による健康影響の重大性が明らかになってきました。光化学スモッグの原因となるオキシダント濃度はひきつづきすべての測定局で環境基準が未達成です。ダイオキシンやベンゼンにつづいてアスベスト(石綿)対策が後手にまわっていることがいま大問題になっています。有害物質による大気汚染への対策強化もこれからです。

 いま小泉内閣の「構造改革」、「規制緩和」、「民営化」によって、社会の安全を保障する仕組み(「規制」)が弱められたり、必要な安全対策(「規制」)が行われなかったことに原因があると見られる問題が、JR宝塚線脱線死傷事故、アスベスト被害、航空機のトラブル、耐震強度偽装問題など国民生活のあらゆる分野で一斉に吹き出してきています。国・自治体の大気汚染対策や公的責任は大丈夫でしょうか。

公共性を保証する自治体行政を

 この4月、「三位一体の改革」の一つとして大気環境モニタリングの補助金が一般財源化の名で廃止され自治体に混乱が生じたため、環境省はあわてて常時観測が後退しない措置をとるための審議会を立ち上げました。大阪府では、環境局と自動車公害対策課の編成替えにつづいて、環境情報センター(旧公害監視センター)と局内3機関の研究・監視業務統合計画、大気常時測定業務の下請け化などが進んでいます。

 市民が身近なところで声を上げることや、市民の手による環境監視の具体的取り組みは、いっそう大事になっています。有害化学物質やアスベストなどの被害、地球温暖化による気候変動、異常気象による災害などもみすえて、多くのみなさんのお力を得て2006年ソラダス運動を成功させるとともに、社会の安全、弱者の援助という最大の公共性が損なわれないよう、住民の立場に立った本来の自治体行政を求める取り組みなどを強めたいと考えています。

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