トップ  >  大阪市の総合区素案に反対する声明 [2017.11.1]

2017年11月1日

大阪市の総合区素案に反対する声明

大阪自治体問題研究所 理事会

「総合区」は当て馬、本命は「特別区」・「都構想」

 大阪府・市は、大都市制度(特別区設置)協議会の第2回会議(8月29日)において『総合区素案』を提出しました。これは、大阪市にある現在の24行政区を統廃合(合区)したうえで、新たに8つの「総合区」に再編しようとするものです。

 この総合区素案は、2018年秋に企図されている大阪都構想の住民投票の再実施に向けて、あらためて成案が提示される予定になっています。二度目の大阪都構想の提案が住民投票で否決された場合、その代替案として総合区を設置するという考え方です。

 しかし、いまの総合区素案には、手続きと内容の両面で重大な問題があります。

1.大阪市の廃止・分割に他ならない大阪都構想(特別区の設置)は、2015年5月17日の住民投票によって否決されています。大阪府知事・市長は「住民投票の結果は僅差だった」や「ダブル選挙で維新が勝った」などと言って、あらためて大阪都構想の住民投票を行おうとしています。このような理屈で短期のうちに再び住民投票を行い、そのカモフラージュのような扱いで総合区を提案することは許されないことです。

2.大阪市を廃止する大阪都構想(特別区の設置)と、大阪市の存続を前提とする総合区は、議論の土台が全く異なっています。総合区は大阪市の自治に基づいて行われるべき改革であり、そこに他の自治体が直接関与することは許されません。ところが現在の総合区の議論は、知事をはじめとする大阪府の関係者が政治的・行政的に関与しています。大阪市の行政区のあり方は大阪市の自治に依拠して検討されるべきものであり、大阪府の関係者が直接関与する大都市制度(特別区設置)協議会や副首都推進局のような府・市合同組織の検討事項からは外すべきです。

3.総合区素案は大阪市の24行政区を8つに統廃合(合区)しようとしています。しかし、総合区の制度は区の数や規模とは全く関係がありません。総合区の設置が合区と一体であるかのような現在の提案の仕方は、現行の24区のままを望むなどの住民の選択を認めない暴論であり、こうした総合区の取扱いはただちに中止するべきです。

4.総合区素案で合区を前提としている形式的理由は、現在の大阪市の職員数を増やさないためです。これまで本庁の職員が一括して行ってきた事務の一部が各総合区へ移管されるため、現在の区の数のままでは職員数がそれだけ増加してしまうことが、合区を行う理由にされています。しかし、総合区に移管が予定されている事務は、「プール、屋内プールの運営」(15.5億円)、「舗装維持補修(生活道路)」(11.7億円)、「電気・機械設備の維持管理(生活道路)」(9億円)、「スポーツセンターの運営」(8.7億円)、「区役所住民情報業務等民間委託事業」(8.2億円)、「放置自転車対策」(6.5億円)、「老人福祉センターの運営」(4.9億円)、「照明灯の補修事業(生活道路)」(4億円)、「保育所・幼稚園の施設管理業務」(3.6億円)など、総合区の裁量の余地がほとんどない定型的事務が大部分です。その見返りに歴史とコミュニティを持つ現在の区を統廃合することは、あまりにもマイナスが大きい改革です。

5.大阪市はここ数年24行政区で「区政会議」という住民自治の取り組みを進めてきました。しかし、総合区の設置にともなって合区をすれば、現行の区政会議は無くなります。そのため、大阪市は今の24行政区を新たに地方自治法上の「地域自治区」として、そこに現在の区政会議に代わって「地域協議会」を置き、総合区単位には別に「総合区政会議」を設置するとしています。これは、今の区政会議の仕組みが総合区と地域自治区(現在の区)にも導入されることを意味しており、住民自治の仕組みとしては重畳的で複雑極まりないものになります。それによって、住民自治の運営と実践は混乱し続けることになるでしょう。これはそのまま行政の意志決定と執行の仕組みにも反映し、行政機構も非常に複雑なものにならざるをえません。

6.これまで示してきたように、総合区素案で示されている総合区の青写真は現実に導入するような代物ではありません。にもかかわらず、大阪府・市が現在のような総合区の提案をしている理由は、総合区が大阪市の廃止・分割=大阪都構想(特別区の設置)の「当て馬」としての位置づけしかないからだと判断されます。合区を前提とした場合、現実の自治権の拡充もないまま現在の区を失うのなら、曲がりなりにも基礎的自治体である特別区の方がマシであるといった印象を住民に与えることになります。それは住民感情を大阪都構想=大阪市の廃止・分割へと狡猾に誘導するものに他なりません。

 総合区はあくまでも区の権限を強化して、住民自治を拡充するための制度です。住民自治の取り組みは、政治・行政・住民による実践と経験の積み重ねを通じて進められていかなければなりません。ところが、大阪市は区政会議をはじめとする住民自治の取り組みに対する総括もなく、あろう事か、総合区を建前にした上からの一方的な区の統廃合を進めようとしています。まさに住民不在のコミュニティ破壊であり、このような行政組織改編は暴挙といっても過言ではありません。

 本研究所は、現在の大阪府・市が提案する総合区の案に反対いたします。

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