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「市政改革プラン2.0(素案)」に関する声明

2016年8月31日
大阪自治体問題研究所 理事会

自治体の責任を放棄し、大阪市の縮小・解体を進める
「市政改革プラン2.0(素案)」の抜本的見直しを。

「市政改革プラン2.0(素案)」の基本的性格とその問題点

 自治体は、住民の安全・安心を支え福祉の向上をはかることを基本的役割としています。しかし、「市政改革プラン2.0(素案)」(以下「プラン」)は、大阪市の自治体としての役割を放棄し、市政発足120年の長きにわたり大阪市民が営々として築き上げてきた大切な財産・土地・文化を民間に売り渡し、大阪市の縮小・解体をすすめる内容となっています。

 プランは、「質の高い行財政運営の推進」「官民連携の推進」「改革推進体制の強化」を三つの柱として構成されていますが、中心となる内容の第1は、財政状況を理由として、さらなる市民サービスのカットや市民の共有財産の売却をすすめるものです。しかし、2006年から大阪市は行財政改革に取り組みはじめ、財政状況はかなり改善されてきました。以下(別紙1)であらためて論じますが、財政危機を理由として喫緊に歳出カットをしなければならない状況にはありません。第2は、自治体と民間の役割分担に関わるものです。しかし、プランに流れる主張は、「官民連携」と言いながら、ただ「民間でできるものは民間に」として民営化を推し進めるものとなっています。自治体運営の基準は公共性であり、採算性のみを理由とする民営化促進策は、自治体としてのミッションもポリシーも投げ捨てたものといえます。自治体と民間企業では寄って立つ論理が異なっており、各々が市民生活や地域社会で果たす役割も異なっています。したがって各々の違いに注意しながら連携を進めていかなければ、必要とされる施策が必要とする市民に届きません。中でも、プランで民営化しようとしている地下鉄・バス・水道・下水道・一般廃棄物・市場などは、そのいずれもが市民の生活に欠くことのできない「ライフライン」として位置けられるものです。だからこそ、これまでも自治体独自の事業として行われてきたし、今後も、市民生活の安心・安全の確保ためにそうあるべきです。

 その他にも、以下(別紙2)で詳しく見るように、プランで示された具体的取組には自治体の役割からみて看過できない多くの問題点が含まれています。

 このような市政改革をすすめることは、自治体の機能を経済至上主義によって縮小し、解体をすすめ、市民の生活を切り捨てるものであり、とうてい認められるものではありません。抜本的見直しを求めます。

別紙1 大阪市財政は市民生活の向上のためにこそ活用すべき

 (1)プランの内容は財政改革だけにとどまるものではありませんが、繰り返し「200億円程度の単年度通常収支不足」への対応が強調されているように、財政状況の改善のための歳出・歳入改革がひとつのポイントになっています。

 プラン策定の背景にある財政状況は今年の2月に示された「今後の財政収支概算(粗い試算)」に基づきます。これによれば、今年度の153億円の収支不足をはじめとして、2022年度までで総額852億円(2023年度以降収支不足は解消)の収支不足が見込まれています。この財政状況に対応するためにプランでは事業・施策の見直しによる歳出削減と未利用地の売却等の歳入策が示されています。

 (2)大阪市は2006年より財政状況を改善するために行財政改革に取り組んできました。とくに2012年から始まった先の「市政改革プラン」では、「厳しい財政状況」という認識のもと、3年間で、479億円の土地売却をすすめ、人件費関連で448億円の削減、そして補助金や施策・事業の見直しによって472億円の削減という大きな改革をすすめてきました。これらの歳入・歳出改革とあわせて、財政圧迫の一要因とされる市債残高も投資的経費の抑制によって削減がすすめられる一方、他方で市税収入のリーマンショック後の緩やかな回復傾向の中で、大阪市の財政状況は改善されてきました。その改善の様子は、毎年度作成されている「今後の財政収支概算(粗い試算)」の変化にみることができます。2012年版では続く10年間の収支不足は約4400億円と見積もられていましたが、以後その数値は改善されていき、2016年度版では先述のとおり852億円まで低下してきました。それにあわせて各種財政指標も改善されてきました。そして収支不足を補うための財政調整基金は1573億円(2016年度見込み)まで積みあがりました。このうち446億円は弁天町駅前開発土地信託事業の損失補てんに回すことになっていますが、それを差し引いても1127億円が残ります。プランでも、基本的に「将来的な収支均衡を見通せる状況にまで到達」という認識が示されています。「今後の財政収支概算(粗い試算)」では、補てん財源(未利用地売却・財政調整基金)を活用しないという前提で計算されています。したがってこの基金を活用しながら財政運営をすすめれば、850億円の収支不足を補いながら、自治体の役割を後退させることなく、未利用地の売却も調整しつつ最小限に抑えることができます。

 (3)これまでの歳出削減によって市民生活は大きな影響を受けています。これ以上の削減は、それでなくとも雇用環境悪化や所得低下によって厳しい状況にある市民をますます厳しい状況に追い込んでしまいます。無駄や非効率を改善することは必要ですが、住民福祉の向上という自治体の基本的役割が果たせなくなってしまうことは避けなければなりません。危機的な財政状況にあれば、厳しい選択も求められるかもしれませんが、財政状況が改善されてきている現状では、市民が閉塞感に陥ることなく、生き生きとしてよりよい市民生活が送れるような財政運営が求められます。

別紙2 具体的項目の問題点

 施設・事業の見直し
 
現在24区ごとにあるスポーツセンター、屋内プール、老人福祉センター、子ども・子育てプラザなどの再編は、昨年住民投票で否決された大阪市廃止と「特別区」への再編を蒸し返すものであり、また、議論途上にある合区や総合区を前提にした施設廃止であり認められるものではありません。

 未利用地の有効活用等
 
未利用地の売却収入の目標額を決めていますが、「通常収支不足」の計算には、この土地の売却代を含めていません。ただ危機感・不安感を煽るようなことがないように、27年間黒字決算が続いている実態など、大阪市の財政状況は市民に正確に知らせるべきです。

 未収金対策の強化
 
国民健康保険料などの滞納者に対して、法的措置の徹底が強調されています。しかし、払いたくても払えないほど保険料は高すぎます。困窮する市民の生活実態を放置したまま、差し押さえ件数をどんどん増やすことに問題があります。国民健康保険料の減免規定を改善し「払える国保料」にすることが必要です。

 人事・給与制度の見直し
 自治体職員には、労働基本権制約の代償として人事委員会による給与勧告制度があります。それを無視した賃金カットの継続は、憲法と地方公務員法に違反するものです。また、現在でも全国の政令指定都市の中で最低の賃金水準であるなか、さらに賃金を下げ続ける方針では、必要な人材、優秀な人材が確保できなくなるでしょう。大阪市では維新市政以降、公務員労働者と市民を敵対させ「公務員バッシング」と人員削減と賃金カットを続けてきましたが、それらは結局市民サービス低下につながっています。区役所では「機構改革」による人員削減の影響で選挙の投票所の体制が確保できず応援を要する事態に既になっていいます。
また、30年以内に発生が予測されている南海トラフ大震災では、市民の生命を守る体制を確保できません。東日本大震災や熊本地震の被災地では、地方自治体職員の不足が明らかになっています。大都市大阪で、大災害に備える人員マネジメントが必要であり、賃金カットの中止や正規職員の増員こそ必要です。

 財務諸表の公表とその推進
 財務諸表とは企業で採用されている会計方式です。このような会計を導入する目的のひとつは、住民が財政状況を判断するために、従来の予算・決算書の内容を補完し、より分かりやすい財政情報を提供することによって説明責任を果たすためとされています。そしてもうひとつの理由として、自治体マネジメントへの活用があげられています。財務諸表の整備自体は総務省が進めているものであり、全国の自治体が取り組んでいます。しかし、これによって官民比較が可能になり、自治体事業の民間開放が促進されるという声もあります。とくに事業別フルコスト情報を示すことによって、自治体と企業の目的の違いを無視して、その数値だけで事業の廃止や民営化、あるいは住民への負担増が決定される危険性を孕んでおり、その運用には注意が必要です。

 地下鉄
 市民の税金と乗車料金で築いてきた地下鉄は市民の共有財産です。地下鉄は、今建設すると4兆円の費用が必要だといわれています。1日1億円の黒字を生んでいる地下鉄を民営化する必要など全くなく、むしろ、津波や大災害に備える安全対策こそ重要です。

 バス
 赤バスが廃止され、路線バスの減便・廃止で市民は非常に不便になっています。高齢者・障害者、そして子どもなどいわゆる交通弱者にとって、移動を保障するためにバスは必要です。地下鉄事業とバス事業を連動させ、両者の長所を生かした路線設定こそ市民の移動の自由を保障するためには必要であり、いっそうの自治体の対策強化が検討されるべきです。

 水道
 水は生命の源です。市民に水を届けることは自治体の最優先事業であり、儲け優先の民間ではなしえない事業といえます。上下分離方式が検討されていますが、このようなものは運営会社は固定資産税を払わず儲けを増やすだけで、大阪市民に利益がありません。むしろ、他に競争相手のない地域独占では水道料金は下がらないという状況になります。当面は大阪市が新会社の株式を100%保有するとはいえ、将来的な売却が否定されているわけではありません。パリやベルリンでも一度は民営化をすすめましたが、その弊害が明らかになったので再公営化が行われています。

 幼稚園
 幼稚園は地域と市民の共有財産です。「民間でできることは民間で」という安易な方針を改め、市立幼稚園の役割を公共による幼児教育の重要性を認識し存続するべきです。
プランは「市内には2区においては市立幼稚園が存在せず…」と、本来やらなければならない事業を怠っていることへの反省もなく、それを逆手にとって「すべて民間に委ねる」とは本末転倒もはなはだしい議論です。

保育所
 
乳児死亡事故が後を絶ちませんが、無認可保育所など小さな規模の保育所ほど事故率が高いという事実を踏まえ、公立保育所を増やすことが求められています。

福祉施設
 「現状と課題」には「福祉施設は、利用者に精神的負担を与えないようするためには、サービスが継続して行われることが望ましい」としていますが、指定管理制度の問題点を理由に民間移管の方向を強めようとするのは本末転倒です。利用者の精神的安定とサービス継続は大阪市が責任を持たなければならないものです。

博物館
 博物館や美術館、動物園などは、その都市の文化水準を表すものです。したがって文化教養施設としての博物館を採算や儲けを優先して運営することは基本的に間違っています。大阪市の歴史と文化に市民触れやすくし、観光客も多く来訪することが出来る様に、むしろ入場料金の無料化も検討すべきです。

一般廃棄物(収集輸送)
 廃棄物発生量の削減と処理処分各段階における安全性確保は焦眉の課題です。収集量拡大を事業目的にする民間事業者への委託ではごみを減らすことはできません。また、震災や災害発生時の衛生管理など、生活環境優先の対策には、公務員の使命や役割は欠くことのできないものです。重要な視点は、民間委託をしても人件費が物件費に移行するだけで行政のコストが減らないことです。

市場
 市場は流通において重要な役割を果たしており、プランの中でも「安全・安心な生鮮食料品を安定的に供給するという公的インフラとしての役割」があると明記されています。現在、3つの市場には食品衛生検査所があり、食品監視員が日常的に流通する食品の監視を行っています。この重要な公の責任放棄につながりかねない指定管理制度の導入は、プランの説明と矛盾し大阪府下全域の食の安全安心を脅かすものです。むしろ、卸売業者の意見(水道料金減免の復活など)が十分に反映される仕組み作りが求められています。

温室効果ガス削減
 温室効果ガス削減目標は、市役所内のみならず市域全体の排出量に関して削減目標を立てるべきです。太陽光発電など再生可能エネルギー普及対策として実行してきた「補助金制度の廃止」を撤回し、屋根貸し制度も含め普及強化が求められます。

囲儡潦発を中止する
 南海トラフ型巨大地震が発生すれば、津波・液状化など不安材料の多い夢洲に誘致計画のある万博・IRカジノなどは、防災面からして府の計画に賛同すべきものではありません。

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