トップ  >  TPP交渉の大筋合意に係る情報を公開し、最終交渉からの撤退を日本政府に求める [2015.12.11]

TPP交渉の大筋合意に係る情報を公開し、最終交渉からの撤退を日本政府に求める

2015年11月5日

一般社団法人 大阪自治体問題研究所理事会

 2015年10月 5日、米国アトランタで開催されていたTPP閣僚会議は「大筋合意」に達したと報じられた。TPP交渉の合意内容の実施は、国民生活全般に重大な影響を及ぼすことは必至である。

 日本政府が公表した「大筋合意」に係る資料によれば、輸入品の関税に関して、工業製品は全廃、農林水産物の95%は撤廃、残り5%については大幅な関税引き下げとなっている。非関税分野では、通関の迅速化や、ISDS条項、ラチェット条項が盛り込まれ、投資、金融、サービス、政府調達、知的財産権などの分野で、WTO協定を上回る大幅な自由化に合意している。まさに、これまで各界が懸念していた項目が含まれている。

 とりわけ、農林水産省から公表された農林水産物の輸入関税の削減・撤廃は、各方面に大きな衝撃を与え、国内生産者の怒りを呼び起こしている。農林水産物の関税品目2,328品目の80%が撤廃され、残りの443品目については段階的削減とされている。主要な林産物の合板・製材の関税は撤廃する。国会決議で特に指定した重要5品目(米、麦、甘味資源作物、乳製品、牛肉・豚肉)でも、586関税品目のうち、30%に当たる174品目で関税を撤廃する。加えて、コメの特別輸入枠を米国、豪州に認め、小麦では米国、豪州、カナダに特別輸入枠を設けた。牛肉は現行38.5%の関税を段階的に下げ、16年目に9%までに下げる。日本政府は、米、麦、乳製品で現行の国家貿易制度を残したことや、牛肉、豚肉におけるセーフガードの設定をもって、重要5品目を守ったと強弁している。しかしながら、衆参国会決議に反することは明白である。

 マスコミ報道では、関税が撤廃・低減され、輸入食料が安くなり、国民にとって経済的利益があると強調されている。国家戦略の重要な柱である食料政策における世界的な趨勢は、長期的な視点に立脚して、食料自給の向上を図ることが基本に据えられている。そのことを顧みないで、TPP交渉において譲歩に譲歩を重ねた安倍内閣には、国民の食料問題を解決する能力はなく、国民生活を危うくするものといわなければならない。

 安倍内閣の推進しているTPP協定の背景には、国民生活の犠牲、大企業・多国籍企業の利益確保がある。それは、法人税減税・消費税増税、医療をはじめとする社会保障・教育制度の市場化、雇用制度の破壊、各種の民営化政策と一体不可分であり、TPP協定への参加を前提とする成長戦略政策の本質である。

 大阪における安倍内閣の成長戦略は、国家戦略特区の具体化として、先端医療特区構想や大都市の国際競争力強化を口実にした再開発、企業誘致、カジノ誘致がもくろまれており、安全・安心な生活を求める大阪府民の要求に背を向けるものである。

 これまで、大阪自治体問題研究所は、大阪の地方自治を発展させ、憲法に基づいて府民生活を擁護する立場から、安倍内閣の推進するTPP協定参加は国民生活を破壊に導く道であり、認めることができないとする「声明」を発表してきた。

 TPP交渉の「大筋合意」にあたり、大阪自治体問題研究所理事会は、安倍内閣のTPP交渉の大筋合意に抗議し、以下のとおり、見解を公表する。

1 安倍内閣がTPP交渉で大筋合意に至った農林水産物の関税措置に関しては、衆参農林水産委員会の国会決議に反しており、認められない。

2 安倍内閣がTPP交渉で大筋合意に至った非関税分野の措置内容に関しては、11月5日に公表があったものの、ISDS条項、ラチェット条項をはじめ、その全体像や運用内容は不透明なままであり、明らかにされていない。TPP協定が国民生活に重大な影響を及ぼすにもかかわらず、交渉内容等が国民に情報公開されていないことは国民主権を軽んじるものといわざるをえない。日本政府は、国民に対して、交渉経過を含むTPP交渉の大筋合意に係るすべての情報を公開すべきである。

3 日本政府は、今後、TPP交渉の最終合意に踏み込むのではなく、直ちにTPP交渉から撤退をすべきである。

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