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大阪大都市圏研究会・公開シンポジウム 「地方自治の明日を展望する」開催
 −地域再生の基本方向を議論−

 大阪大都市圏研究会公開シンポジウム「地方自治の明日を展望する」は、2007年11月10日(土)午後、グリーン会館2階ホールで行われました。

 はじめに、研究会代表・シンポジウムコーディネーターの樫原正澄・関西大学教授より、あいさつとして、研究所における大阪の地域研究の経緯と大阪大都市圏研究会の紹介が行われました。

自治体を地域共同体としてとらえ直す

 つづいて、保母武彦・島根大学名誉教授が「地方自治の明日を展望する」という基調講演を行いました。冒頭、問題提起として、住民自治が重要だが大阪は外から見ていると住民の力が弱くなっているのではないかという点、かつて革新自治体の時代は都市が自治をリードしていたが、今日ではむしろ農村に学ぶ必要があるのではないかという、2点を講演のポイントとして指摘されました。

 夕張問題に象徴される地方崩壊の問題では、夕張が国・総務省によってナショナルミニマムをどこまで下げられるかの実験台にされていると指摘されました。大都市圏としての大阪でも、他の都市圏に比べて、人口・産業の落ち込みなどデータを挙げて、地域社会の崩壊現象が起こっているとしました。そのなかで、地域を再生する方向性として、地方自治体を地域共同体としてとらえ直すことが必要ではないか、制度改革だけではなく、住民・行政ともに意識改革し、創意・工夫を発揮することが大事であると提案されました。

人への投資に重点を

 つづいて、自治・分権ジャーナリストの会の浅野詠子さんは、公共事業の透明性の確保を追求しているご自身の仕事について紹介されました。立候補者が定数に満たない奈良県の山間部の自治体など、地方崩壊を強く感じていることを話されました。また、奈良県内でも、北部に人口や経済活動が集中し、南部の山間部の過疎化や地域崩壊が進行する南北問題を紹介し、地方交付税の使い方について見直して、人への投資をもっと重視するべきではないか、その点奈良県は都市と水源地の関係をつくりあげることを考えるフィールドになりうるのではないかという問題提起を行いました。

いかに地方自治を展望するか

 ついで、アルパックの杉原五郎氏は、大阪の現状について、自治体と中小企業の抱える問題点は共通しているとし、中小企業憲章のレポートの取り組みを紹介されました。経営の課題を分析する作業です。地域崩壊については、大阪でもがんばっている事例はたくさんあることを紹介しました。まちづくりも企業も、経営という点では共通している、知恵と情熱と社会的な使命感をもっと「ひと」とそれなりの「おかね」があることが、まちづくりの成功の秘訣ということでした。

 つづくフロア発言も含めたディスカッションでは、「地域共同体としてとらえるときに、農村部と都市部では条件が違うのではないか?」、「外の力を使う視点も必要なのでは?」、「シャープ誘致などの府の開発政策をどうみるのか?」といった質問が出されましたが、議論は、大阪市の区や地域への分権が話題に収れんしていきました。産業や福祉など、政策領域別に、適切な単位はどこかという整理が必要であり、福祉や教育などを通じて、地域に人の顔が見える関係ができ、企業も、地域の経済循環を通じて、ここに入ってくるようになるだろう。市民の動きをつくることも必要だが、これまでにすでに起こっているいろんな活動をつなげていくことでもまちづくりはできるのではないかという意見も出ました。

 地方自治の明日を切り開く提案としては、シンポジストからそれぞれ、「人づくりと、いろんな人が集まるプラットホームづくり(杉原)」、「様々な市民運動がバラバラではなく、マニフェストを市民がつくるような市民力のトレーニング(浅野)」、「顔が見える自治体をどうつくるか? 行政が動かないのであれば、住民が動くこと。住民活動の集まりをつくって広げていく。請け負い民主主義・お任せ民主主義を改めないとだめ(保母)」という発言があり、シンポジウムは閉じられました。

 最後に、研究会の代表である樫原正澄教授は、このシンポジウムから示唆を得たポイントとして、第一に、どこかで、市民がなるほどと思えるようなビジョン・提案をつくる必要性、第二に、自治をつくるための制度改革、具体的には大阪市の区の改革についての研究を深めていくこと、第三に、産業政策をどのように作っていくのか、という課題をあげて、シンポジウムのまとめとしました。

 筆者は、とりわけ、保母教授の、講演冒頭の2つのポイントが印象に残りました。日本全国、行ってないところはないのではないかと思われるほど全国をくまなく歩いて得た、保母教授が、都市も農村に学ぶべきである、それは、地方自治体を地域共同体としてとらえ返すことという話です。農村では、住民主体のまちづくりは、自治であると同時に、地域の経営でもある、参加活動と共に経済活動も同時に行うことによって、住民の生をトータルに支えているのだというのが私なりの解釈です。アメリカのコミュニタリアン、マイケル・ウォルツァーが、インボランタリー・アソシエイション(非自発的結社)の重要性といったことを言っています。そこでしか生きられないという腹のくくり方が、その社会を何とかよくしなければという動機を生み出すというのです。私、あなた、彼、彼女が、みんな無くてはならない、交換不可能な存在になる、そのためには、顔の見える範囲に、自由な意見を言え、そしてまちのあり方に影響を与えられる仕組みをつくりだすことがその一歩となるのではないでしょうか。

(柏原誠・大阪経済大学専任講師)

*小見出しは編集部の責任で付けました。

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