研究会・調査活動  >  活動報告  >  「道州制問題」学習会開催 ―道州制の問題点・府県制の現代的意義を改めて考える―

「道州制問題」学習会開催
 ―道州制の問題点・府県制の現代的意義を改めて考える―

 2007年10月25日、(社)大阪自治体問題研究所他の主催で大阪グリーン会館において「道州制問題」学習会が開催され、25名が参加しました。道州制導入が具体化されつつある中で、道州制の問題点、府県制の意義や政令市における住民自治強化の問題について学習と討論を行いました。

 開会あいさつを行った鶴田廣巳・関西大学教授(研究所理事長)は、第28次地方制度調査会は、市町村合併の仕上げをしそのうえで道州制の導入を提言したが、道州制導入が何をもたらすのか、その問題点を検討し、対抗軸をどう打ちだすのかがもとめられている。また、全国知事会が、「改革派」知事の退場する中、大多数の知事が道州制導入の推進に賛成し、推進派となっている状況も指摘しました。

府県制と道州制

 最初に、小森治夫・京都橘大学教授が「府県制と道州制」をテーマに報告。府県制と道州制をめぐる論議を整理し、府県制の評価と展望を提起しました。

 市町村は明治、昭和、平成の3回の大合併により、激しく変動してきたが、府県は1890年の府県制施行以来、一世紀以上にわたり存続してきた。現在の府県は歴史的に形成され、独自の政治性と固有の文化性をもつことが指摘されました。

 府県には次の二つの役割がある。〇堋村や府県を越えた広域的な自治を発展させる。∋堋村やコミュニティなどの狭域的な自治をまもる。府県を広域化と狭域化の二つの視点から論じる必要があると指摘。

戦後期における府県制と道州制をめぐる論議

 戦前期においても道州制構想はあったが、戦時期に入り地方自治が完全に機能停止状態となり、道州制が本格的に論議されたのは戦後に入ってからである。

 1957年の第4次地方制度調査会において「地方」制案、「府県合併」案の少数意見が併記された。しかし、戦後、知事公選制などの戦後民主主義の定着により、官選知事を中心とする道州制構想は実現しなかった。経済界は道州制構想を要望するが、第二臨調は具体的な道州制構想は提案せず先送りにされた。81年の第18次地方制度調査会では「公選知事を中心とする府県制が定着した」ことを評価している。

府県制の評価

 府県制の評価をめぐり、研究者による様々な論議があるが、小森氏は府県制の特質として、|楼菫躪膵埓の担い手、広域行政の担い手、産業経済行政の担い手、A躪臈技術の担い手、せ堋村自治の守り手、の四つを指摘し、総じて府県制は、「国と地域を結ぶ、集権と分権を統一する日本型の民主的統治形態」であると評価しました。

府県制の展望

 「改革派知事」と言われる人々−鳥取県の片山善博前知事、長野県の田中康夫前知事−の登場によって、国の政策と対抗しつつ、府県独自の政策をすすめうる条件があることが示された。「知事」という役職の安定性と権限の強さを示したとも言える。まさに「知事の力量が問われる時代である」ことを強調しました。

 そのうえで、水資源開発や廃棄物規制など、府県を越えた広域的な協力を必要とする行政課題には、「府県連合」の可能性を追求すべきと指摘。つまり、府県では対応できない広域的・総合的な行政分野については府県連合をつくって広域的、総合的な調整を行うということを提案。

 府県と市町村の関係については、府県は権限と財源を優先的に再配分された市町村のサポート役に徹する一方、単独の市町村ではできない広域的、総合的な行政分野については、市町村連合の結成をサポートする、あるいは府県が担当するべきだと指摘しました。

大型合併と道州制・指定都市での住民自治

 第二に、初村尤而・研究所研究員が報告を行いました。
 「平成の大合併」は、小規模町村の消滅、マイクロ都市と指定都市の増加をもたらした。指定都市の増加(12市から17市へ)は、都道府県の空洞化をもたらし、その存在意義を問うことになっている。指定都市の側では、この状況を従来から主張してきた大都市制度実現のチャンスと見て、道州制のもとでの指定都市のあり方について研究をすすめている。

 しかし、合併により生まれた新しい指定都市は、中山間地域や過疎地域をかかえ、何らかの住民自治システムの導入をせざるをえなくなっている、と指摘。

 初村氏は、政令指定都市市長会の『道州制を見据えた新たな大都市制度の在り方についての提言』(06年1月)をとりあげ、そこでは道州制導入のもとで基礎自治体は、広域事務・連絡調整事務等以外はすべて指定都市の事務とすべきだとしている。さらに大阪をモデルに大阪府から移譲すべき事務と税源の試算を行っている(銀行系シンクタンクが試算)。

置き去りにされる住民自治システム

 こうした指定都市の動きはあるが、足元は盤石ではない。超広域合併の浜松・新潟に見られるように地方自治法による地域自治区を設置するなど、より小さな単位での住民自治システムを導入している。「老舗」の指定都市でも行政区を単位にした「団体自治」的改善や、「住民自治的工夫」をすすめている、と指摘しました。

大阪府の役割

 参加者から、大阪府では太田知事は「広域化」機能を強調し、地域レベルでは「コーディネーター」の役割を言うのみで狭域の市町村自治の守り手にはなっていないことが指摘されました。これに対し、小森氏は長野県の田中前知事による「信州モデル」構想を事例にあげ、県が市町村合併を強制せず、小規模町村の「自律」支援のために県職員の派遣を積極的に行っていることを指摘。初村氏は福島県泉崎村の財政再建団体転落寸前の事態に、根本・前矢祭町長が県に働きかけ、佐藤前知事がうごいて、県が泉崎村を支援したという事例を紹介。府県の役割が発揮されている事例を紹介しました。

 また、別の参加者から小森氏に対し、州の導入を否定しているのかと根本的な質問がなされ、氏はEUにおける州の人口規模と機能の違いを指摘し、日本で想定されている「道州」は数千万人という人口規模であり、住民自治が機能しないと指摘しました。府県連合についても、今後検討していくことが課題とされました。
 いずれにしても、政府による道州制の強硬な導入に、対抗軸を示していく契機となった有意義な学習会でした。

(文責 織原 泰)

上記、行事での当日配布のレジュメ・資料等、及び報告集等について必要な方は、(社)大阪自治体問題研究所までお問い合わせください。

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