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グラフで見る大阪府財政

黒田 充  (大阪自治体問題研究所 研究員)
「おおさかの住民と自治」2000年5月号掲載

 昨年末、大阪府の1998年度決算が、一般会計で102億円にものぼる81年度以来17年ぶりの赤字であることが明らかになった。府は、これは基金の取崩しや借入れ等の財源対策を行った上での赤字額であり、実質はさらに大きな赤字であるとし、財政再建プログラム(案)実行の必要性を強調した。

 また、横山前知事のスキャンダル辞職による知事選では、財政再建が最大の争点となったが、結果は、前府政を継承する知事の誕生となった。新知事は財政再建プログラム(案)の精神を引き継ぐことを表明している。

 いよいよ財政再建プログラム(案)が、本格的に実行される。こうした元で、本稿では、あらためて府財政危機の背景を決算統計を基に筆者が作成したグラフから探ることにしたい。

グラフ (1) 財政力指数、経常収支比率 グラフ (2) 歳入決算額(普通会計)  まず、財政構造の弾力性を計る指標とされる「経常収支比率」は、グラフ(1)のように、バブル崩壊後急上昇し99年度には117.4に達している。全国順位は92年度以降、連続最下位である。

 「経常収支比率」は、地方税や地方交付税などの経常的な一般財源が、人件費や公債費など経常的に支出される経費にどの程度充当されたかを見る指標である。大阪府の場合、曲がりなりにも財政力指数が高い(97年度全国3位)ために地方交付税は少額であり、経常一般財源の大部分は府税が占めている。したがって、歳入面から見た場合、府税収入の減が、経常収支比率を押し上げる要因となる。

 歳入決算額のグラフ(2)から、90年度まで順調に伸びてきた府税収入は、92、93年度と急減し以後回復していないことがわかる。98年度は90年度に比して3200億円の減である。

 この急減の最大の原因は、グラフ(3)から明らかなように、府税の大きな部分を占めてきた法人2税(法人住民税、法人事業税)が、ピーク時の89年度に対して98年度には半減(約4000億円の減)するなど激しく落ち込んだためである。府税総額に占める割合も6割から4割弱へと小さくなっている。

グラフ (3) 法人2税収入額グラフ (4) 歳出決算額(普通会計)  歳出面で経常収支比率を押上げる原因とされている人件費は、グラフ(4)のように確かに増えてはいるが、96年度以降では、毎年度10%以上の伸びを示す公債費に比べると小さく、ほとんど横ばいである。90年度を100とした場合、98年度は、それぞれ119と140である。

 ところで、経常収支比率が上昇することは、臨時的経費、すなわち普通建設事業費などに回す経常的な一般財源が少なくなると言う意味で問題とされている。ところが、実際に経常収支比率の上昇にともない普通建設事業が減少しているのかと、グラフ(5)を見れば、バブル崩壊後、すなわち経常収支悪化後も、むしろ増加し95年度には6300億円に達している。その後、減少に転じたとはいえ、98年度決算でも4300億円とバブル期の91年度の3900億円をも大きく上回っている。

 普通建設事業費の内訳をグラフ(5)から見ると、自主財源や起債で賄われる単独事業は、88年度に補助事業を上回って以来、大きく伸び、93〜95年度には3500億円前後と80年代半ばの3.5倍にも膨れ上がった。

グラフ (5) 普通建設事業費グラフ (6) 地方債年度末現在高  経常収支の悪化、すなわち臨時的経費に回すべき自主財源が減少している中で、府は、どうやって普通建設事業、特に単独事業の財源を確保したのだろうか。それはグラフ(2)を見ればわかるように、起債措置、すなわち府債の発行である。91年度以前は歳入総額に対する府債発行額の構成比は数パーセント台であった。しかし、その後、10%を大きく超えるようになり、95年度には21%にも達している。

 このように府債が大量に発行されたため、グラフ(6)のように、91年度末以前は、1兆3000億前後と一定水準であった地方債残高は、92年度末以降急増し、98年度末には10年前の2.8倍の3兆6000億円にも膨れ上がった。

 グラフ(6)から地方債残高の内訳を見れば、単独事業の財源となる一般単独事業債が、法人2税の落ち込みに対する減収補てん債とともに、この急増に大きく貢献していることがわかる。前者は97年度までの10年間に3.3倍(9400億円の増)、後者は4.5倍(5600億円の増)の伸びである。

 このように膨れ上がった借金を返すために、財政再建プログラム(案)における収支見通しでは2000年度以降毎年、3000億円以上(2003年度は最高の3650億円)の公債費の支出が必要だとしている。98年度の公債費は過去最高ではあるが、それでも2400億円である。公債費比率、起債制限比率とも、グラフ(7)のように94年度以降上昇を続けているが、これでは、こうした傾向は改善されそうにない。

 一方、93年度を頂点としてバブル期に貯めこんだ基金は、グラフ(8)のように、財源対策として減債基金が1900億円から500億円へと大きく取り崩されるなど、全体で4400億円から2500億円へと減少している。

グラフ (7) 公債費比率、起債制限比率グラフ (8) 基金の年度末現在高  以上のように、府税収入が減少し経常収支が悪化しているにもかかわらず、政府の「景気対策」への追随と関西財界の期待にこたえて、起債と基金取崩しによる普通建設事業を強引に進めてきたことが、今日の府財政危機の最大の原因である。にもかかわらず、大阪府は反省することなく、財政再建プログラム(案)における収支見通しにおいて、99年度以降も、普通建設事業費が大部分を占める投資的経費の毎年度の支出を4000〜5000億円と見積もっている。


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 本レポートは、「おおさかの住民と自治」通巻256号(2000年5月)、2000/5/15発行 から転載したものです。著作権法に基づき論文等へ引用する際には、出所を明記してください。

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