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町屋再生に見る「まちづくりと市民協働の秘訣」


松本裕彦(大阪市立大学経営学研究科後期博士課程)

 8月28日、「第3回 なにわ元気アップフォーラム」が、(主催)大阪市、(共催)大阪市大大学院創造都市研究科により開催された。平松邦夫市長が登場することもあって、会場となった大阪駅前第2ビルに開設された創造都市研究科の教室は大入り満員。市長は冒頭挨拶で「まちづくりについて、これまで行政がきっちり対応してきたのか、ほとんどできていないのかも含めて話し合いをしたい」と意気込みを語った。

住民の方に町の良さを知ってほしい

 「まちづくりと市民協働の秘訣」をテーマに、基調講演に立った「からほり倶楽部」代表理事の六波羅雅一氏は、空堀商店街周辺で、建築の専門家として町屋再生に取り組んできた経験を次のように語った。解体されようとする長屋を複合施設として再生させ、「惣」や「練」には喫茶店や雑貨などの店舗が入居し、「萌」の中には直木三十五記念館を寄付金で設立することもできた。最近は、大阪市HOPEゾーン事業も活用しながら取り組み、堺市内でも町屋を複合施設に再生している。私たちは「住民の方に自分たちの町の良さを知ってもらいたい」との思いで取り組んできた。

 平松市長から「(1)古い建物を再生したきっかけは何か、(2)町の人々が入り込んできたという印象はあるか、(3)大阪市の対応はどうだったか」などの質問が出された。平松市長は元ニュースキャスターだけあって手馴れた感じであった。六波羅氏は「(1)潰されそうな町屋について仲間と相談して『やはり残したい』という思いでやってきた、(2)当初は住民から反対されたが『からほり・まちアート』の取り組みで1万人もの観光客が町の商売にも影響を与えだすと認めてくれるようになった、(3)大阪市のHOPEゾーン事業に感謝している」などと返答された。

「まあええか」の精神が大事

 次に講演に立った寺西興一氏(大阪府登録文化財所有者の会事務局長)は、地下鉄「昭和町駅」のすぐそばで、所有する長屋を店舗に改修した経験を次のように語った。私は六波羅さんのような使命に満ちた考えはなく、これまで周りの人の意見を聞いて「ままええか」という気持ちでやってきた。阿倍野区は戦災に会わなかったため長屋が残り、私が生まれた昭和20年の大阪市内は長屋ばっかりだった。昭和7年に建設された私の所有している長屋が文化庁登録有形文化財に指定され、見た目がボロボロだったので宮大工に頼んで店舗に改修した。最初は屋根、樋、柱、土台程度を改修するつもりだったが、窓、物干し場、手すり、玄関、素戸へとエスカレートしていった。昭和の日(4月29日)に開催されるイベント「どっぷり昭和町」ではジャズ演奏や落語など多彩な催しに長屋の沿道は人並みで賑わった。町内会の協力もあって道を占拠していた違法駐輪が消えた。私が有名になったのは、長屋を改修して店舗にする方がマンション建て替えより経済効果があると発表したことに、マスコミが注目したからだ。ちなみに、現在の店舗はフレンチの「混」、和食の「旨魯」、中華の「AKA」が営業している。

 続いて平松市長から「(1)固定資産税が2万円というお話にはびっくりしたが、RCのマンションに建替えてもらっていれば耐震性も心配ないのだが、(2)『どっぷり昭和町』のイベントは大盛況だが無法地帯のような感じに見えるが事実はどうか、(3)古い町屋再生は経済的な波及効果があると考えていいのか」などの質問が出された。寺西氏は「(1)昭和19年と21年の二つの南海地震を経験して潰れなかった建物だが、今後は耐震補強の検討は必要だろう、(2)これからは空堀の取り組みに学んで、町の人の協力で『まちアート』をやってみたい、(3)経済効果だけでなく、自国の文化を見直すきっかけになるし、日本人の癒しにもつながると考えている」などと返答された。

人情を大切にした市民協働

 コーディネーター役の小長谷一之教授(市大大学院創造都市研究科)は「空堀の再生町屋は『ほう・れん・そう』、昭和町の再生町屋は『アカ・シロ・コン』と覚えてください」と会場の笑いを誘った後、「(1)全国で町屋再生は取り入れられている、(2)寺西氏のケースで放置自転車がなくなり花が置かれるようになったことに見られるように町の人情が関係する、(3)『まちアート』などの取り組みでは大阪らしさが大切だ」などとコメントされた。

 会場から「(1)ふるさと納税の大阪市への寄付を区に限定してできないか、(2)空堀からアメリカ村や堀江につながる『くすのき通り』の歴史を掘り起こして西から東へ結ぶ『特区』を考えてほしい」などの質問が出された。

 平松市長から「(1)ふるさと納税を橋下知事は『おおさかミュージアム構想』に活かそうと大々的にやっているが、ふるさと納税は確定申告などややこしく、単に寄付すれば済むものではないので、大阪市は、市民が理解できるように周知できた段階でやっていく、(2)大阪市と住民が一緒になってお祭りができるまちづくりをしていきたいし、そのためにも市民協働もしたい」などと返答された。

 講演者に対して「堺市で古墳群を盛り上げる取り組みをしているが、若い人の参加で新しい風を入れるための方法はないか」との質問が出され、六波羅氏から「上町台地からまちづくりを考える会」の活動もしているが、いろんな団体とコミュニケーションを持っていると良いことがある」、寺西氏から「若い人の意見を聞いて『まあええか』とやることが大事かな」との返答がなされた。

「町屋再生」「市民協働」に本腰を

 筆者は、これまで大型開発中心に展開してきた大阪市が、今回のような町屋再生について市長が対談することに大きな関心を持った。大阪市は第三セクターの経営破綻を契機に「国際集客都市」から「創造都市」へと都市像を転換させてきたが、現状は、梅田の北ヤード地区を初めとする大規模開発が行われる一方で、空堀地区のような町屋再生が取り組まれている。大阪市が直面している閉塞状況を打開するためには、戦後長らく続いた大資本・行政主導の大規模開発を抜本的に見直し、大阪市の歴史と文化に根ざした住民主体のまちづくりを目指す必要がある。そのためにも、自治体として「町屋再生」と「市民協働」に本腰を入れるべきである。筆者の詳しい主張については、大阪自治体問題研究所編・「研究年報(11)」を参照いただければ幸いである。

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