トップ  >  月刊誌(おおさかの住民と自治)  >  あのまちこのまちから  >  あのまちこのまちから7:ぶどう産地を守る 「南河内ぶどう塾援農隊」の取組み

ぶどう産地を守る 「南河内ぶどう塾援農隊」の取組み
大阪府普及指導員 嶋野 延男

都市住民とぶどう農家の共同で大阪のぶどう産地を守る

今回のあのまちこのまちは、全国でも有数のぶどう産地である大阪で、農業ボランティア組織として、太子町内の荒廃ぶどう園の保全管理とぶどう専業農家の農作業支援で活躍している「南河内ぶどう塾援農隊(以下、援農隊)」の取組を、普及指導員(自治体職員)として8年間(平成15年〜22年)職場の同僚、関係機関の職員の方とともに支援してきた事例を紹介します。

現在、援農隊の主要メンバーは「太子町ぶどう塾(NPO法人)」に参画し、都市住民にぶどう栽培実習を行い活躍の場を広げています。

大阪のぶどう産地の現状(全国第8位、デラウエアでは第3位の生産量)

種なしぶどうの名前で子どもたちに人気のあるぶどう品種「デラウエア」の生産量がこの大都市大阪で全国第3位と聞いて驚く人は多いと思います。ぶどうと言うと「巨峰」「ピオーネ」思い浮かべますが、大阪府では「デラウエア」はぶどうの約9割の栽培面積を誇っています。さらに、全国一早く4月下旬には収穫が始まります。この作型は超早期加温栽培といい、12月下旬には重油ボイラーを使いビニールハウスを加温します。他にも加温栽培、無加温二重栽培、無加温一重栽培、雨よけ栽培と、7月下旬収穫の露地栽培まで農家の方は労力分散を図れるよう作型を組み合わせ長期間ぶどうを出荷しています。なお、大阪のぶどう産地は栽培面積順に「羽曳野市」「柏原市」「太子町」「大阪狭山市」「交野市」となります。

ぶどう廃園対策として始まった「南河内ぶどう塾」

日本農業の大きな課題である農業者の高齢化、担い手不足は、ここ大阪のぶどう産地でも例外ではありません。

そんな中、廃園が増加するぶどう産地の荒廃を何とかしようと考えられたのが、都市住民の力を借りることでした。ぶどう栽培に興味ある都市住民を募り、ぶどう栽培に関する講義、実習を経て基礎的な知識、栽培技術を身に着けてもらい、廃園化するぶどう園を栽培管理してもらうことを目的に、平成12年から「南河内ぶどう塾(以下、ぶどう塾)」を開催しました。ぶどう塾は実習中心のカリキュラムで、毎年30名ほどの都市住民に、年間約15回の研修を行ってきました。

最初は、ぶどう塾修了ごとに1つの援農隊ができ、約10アールのぶどう園を管理する仕組みでした。援農隊は男性は60才代、女性は50才代が多く、会社定年後あるいは子育てが一段落着いた年齢層の方が活動されています。しかし、援農隊のメンバーも年齢や家庭事情の変化などで徐々に援農隊を離れざるを得なくなるのが普通です。それでも平成22年には5班ある援農隊や援農隊OBが活躍し、廃園を未然に防いでいるぶどう園は約2haになっています。

ぶどう専業農家の農作業支援が求められる

ぶどう塾3年目の頃、地域のぶどう専業農家の方から援農隊に対し、農作業の応援を求める声が大きくなってきました。特に、共同作業で多くの人手が必要な「ぶどうハウスのビニール張り」に大きな期待が寄せられていました。そこで、援農隊と農家をつなぐ方法検討するため援農隊や農家の代表と協議を重ね、その結果「有償ボランティア」の形で農作業支援することを決め、活動をスタートさせました。この際には、大阪ボランティア協会にも相談し、有益なアドバイスをいただきました。中でも「日本では有償ボランティアは定着しにくいですよ」の言葉は強く印象に残っています。また、ボランティア保険の加入で万一の事故にも備えることができました。

農作業支援は「ビニール張りの手伝い」「せん定枝拾い」「傘紙つけ」などの補助的作業から、次第に重要な作業に変わり、数年後にはデラウエア栽培では最も重要な「ジベ処理」作業まで任されるようになり、信頼度が深まっていることを伺い知ることができました。平成22年頃には5班の援農隊で約120日、延べ約400人・日の農作業支援(援農)を行うまでになりました。潜在的な援農希望はもっとありましたが、5班の援農隊では限界と考えられます。この頃農家からは「援農隊がおかげで2、3反(1反=10アール)は止めなくて済んだ!」の声が、援農隊からは「家ごとで色々なやり方(農作業の手順、方法など)があって勉強になるわ!」との声が聞こえるようになりました。このように農作業支援(援農)は約2haの廃園化を阻止しながら援農隊の技術向上にも繋がっています。

また、ぶどう塾、援農隊を経てぶどう農家となった方も現れました。もともとぶどう栽培を希望されていたのですが、自分では中々ぶどう園が見つからず、そんな時ぶどう塾を知り相談に来られた方です。今では地域の出荷組合で大きな存在になっています。詳しくは、ご本人の手記が雑誌「現代農業・2010年3月号」に掲載されています。

最後に!

今回、ぶどう塾あるいは援農隊の取組を紹介しました。いままでに367名がぶどう塾を受講し、60名が援農隊で活躍されています。体力などの理由で援農隊に参加できなかった方でも、消費者としてぶどうや農産物の購入で地元農業を応援していただいています。大阪のような大都市であっても都市住民の理解と協力のもと都市農業は大切にされるべきですし、食料自給率が4割の日本には、食料主権を大切に国内自給の増大に向けた農業施策が重要となっています。もちろん日本農業を壊すTPPには反対です。

*今回の太子町の取組以外でも大阪府内ではぶどう園の荒廃を何とかしようと都市住民による農業ボランティア活動などが取組まれているようです。詳しくはHPなどを参考にしてください。
・柏原市ぶどう担い手塾
・飛鳥ワイン? ボランティア募集
・仲村わいん工房 ボランティア活動
・カタシモワインフード? 援農ボランティア募集

プリンタ用画面
前
あのまちこのまちから8:第12次岸和田市政白書づくりを取り組んで
カテゴリートップ
あのまちこのまちから
次
あのまちこのまちから6:エコでつながる西淀川推進協議会 ―廃油回収が地域を結ぶ―

コンテンツ
大阪自治体問題研究所

一般社団法人
大阪自治体問題研究所

〒530-0041
大阪市北区天神橋
1-13-15
大阪グリーン会館5F

TEL 06-6354-7220
FAX 06-6354-7228

入会のお誘い

あなたも研究所の会員になりませんか

詳しくは、入会のお誘いをご覧ください。

「案内リーフレット兼入会申込書」(PDF)

機関誌

「おおさかの住民と自治」

おおさかの住民と自治