トップ  >  月刊誌(おおさかの住民と自治)  >  あのまちこのまちから  >  あのまちこのまちから5:『みんなつながれ笑顔の松原』 ―松原市政白書パート?を発刊―

松原市職員労働組合(以下、市職労)と大阪自治体問題研究所(以下、研究所)は、1年4か月にわたる「松原まちづくり研究会」の調査研究活動をふまえ、『みんなつながれ笑顔の松原−松原市政白書パート?』(以下、第四次市政白書、自治体研究社)を出版した。4月11日に、松原図書館でおこなわれた出版学習会には、市職労の役員・市職員、議員、住民らが参加。市政白書の取組みは『くらしと福祉のネットワーク−松原の未来を創る』(2005年12月)以来8年ぶり、4回目である。

第四次市政白書には、市職労から委員長の峠田和美氏ら20人、研究所から中山徹(代表)、高山新、黒田充各氏、及び筆者が参画した。
本稿は、この第四次市政白書の取り組みの紹介である。

コンパクトなまちの魅力を活かす
少子高齢化時代を迎え

松原市は大阪の「へそ」ともいえる中心に位置する。狭い市域に鉄道駅が4駅あり、阿倍野まで十数分しか要しない。中央環状線などの幹線道路が市内を縦横にはしる。通勤にも、物流にも、至極便利である。しかも民主市政時代に保育所や学童保育、図書館や体育館が整備され、勤労者にとって快適な生活空間へと変貌し、高度経済成長期以降、人口が急増した。

半世紀後、少子高齢化の時代を迎えた。市域全体が平坦であり、高齢者や障がい者も車いすで移動できる地勢的特徴をもつ。河内天美駅周辺の商店街は、平日の昼間でも人通りが絶えない。この地の利に加えて、民主市政時代に整備された医療や福祉、文化施設などのストックがさらに増強されるなら、自分の力で買い物や医者通い、散歩を楽しめる、社会的弱者にやさしい街として発展できる。高齢者だけでない。比較的廉価で住宅を確保でき、乳母車の親子も安心して闊歩でき、保育、学童保育が充実しているので、所得が低い青年でも働きながら子育てできる街である。

ところがこの街のストックが壊されようとしている。「松原まちづくり研究会」は、その象徴が「市立病院の閉院(2009年)」であると考えた。複数の診療科を効率的に受診したい高齢者、身近な医療機関で通院治療を受けたい癌患者、自分が育った地域で出産したい妊婦、小児救急を必要とする子育て家族から、市立病院を理不尽に奪ったからである。

第四次市政白書では、将来像を提案した。松原市がもっている良さ―自然・歴史・生活がコンパクトにまとまっていることを活かすことである。「高齢者や一人暮らし世帯からみると理想的な住宅地になる条件を備えている」。具体的内容は、第四次市政白書をお読みいただきたい。読み終えたとき、きっと松原に移り住みたいと思うであろう。

第一線で働く自治体労働者が参加して
研究会、ウオッチング、ヒアリング

次に調査研究活動の様子を紹介しよう。

研究会は2011年11月に発足し、毎月1回、市庁舎や市職労の会議室で開催した。研究者らが行政資料や統計をもとに松原市の現状と課題を報告し、市職労の役職員が自らの仕事を通じた市政の現状と課題を報告した。

タウンウオッチングは、7月に、河内天美駅や河内松原駅を起点に二回おこなった。歩いてこそ見える風景があり、歩きながら感想を出し合い、高齢者や子どもの目線で街を見ることができた。シャッター通りにさせない天美西商店街の努力、あちこちに残存する溜池や農地、他方、どぶ川と化した水路、密集した木造賃貸住宅などが筆者の印象に残っている。

ヒアリングは行政担当者(保健医療、産業)、住民団体(緑花協会、新日本婦人の会、民主商工会)、経済団体(JA、商店街連合会、商工会議所)などを対象におこなった。市立病院閉院問題では議員や関係団体の皆さんに集まっていただいた。新日本婦人の会では数人に出席していただき、市内各地の課題について意見交換した。

市政白書づくりの魅力
地域のたからものさがし

最後に筆者の所感を述べ、本稿を閉じたい。

市政白書づくりは、金銭の授受上、自治体労働組合と研究所との「委託」契約の形式をとるが、実体は自治体労働組合と研究所との共同事業である。自治体労働者と研究者、専門家が共同して、住民の暮らしと市政を分析し、提案することにある。

筆者が今回、事務局として大事にしたかったことの一つは、住民生活を支える現場の労働者が、一人でも多く参加し、自治研活動の魅力を知ってもらうことである。昨今、労働組合に対して、質量ともに小さくなったという評価がなされる。しかし第四次市政白書に関わった自治体労働者の数は、第三次21人に対して第四次が20人、女性は8人から15人へ倍増した。その多くは介護、保育、学童保育に従事する自治体労働者である。各自が文章にまとめた力量には特筆すべきものがある。また出版学習会で、ある住民(女性)が「今回、私はヒアリングを受ける側にいた。次はヒアリングする側になりたいと思った」と発言した。以上はほんの一例である。市政白書づくりの取組みは、地方自治の主人公を育てる社会運動である。

筆者自身も多くのことを学び、確信を広げた。その一つは地域の「たからもの」をいっぱい発見したことである。緑花協会の岡田さん、JAの営農活動に従事している諸氏のヒアリングから都市農業の魅力と可能性を実感できた。その感動は第四次市政白書の第4章に記した。

木村雅英(大阪自治体問題研究所研究員)

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