トップ  >  月刊誌(おおさかの住民と自治)  >  あのまちこのまちから  >  あのまちこのまちから2:維新系首長とまちづくり住民運動 ― 守口の街づくりを考える会の経験から ―  [2013年1月号]

維新系首長とまちづくり住民運動  ― 守口の街づくりを考える会の経験から ―

大阪市の北東に隣接する衛星都市・守口市(人口約14万6千人)では、2011年夏に大阪維新の会系の市長が生まれましたが、その「市政改革」に疑問を持ち、まちづくりを拡げる住民運動がひろがっています。「守口の街づくりを考える会」事務局長の針田春光さん、事務局次長の藤木壮さんを訪ね、まちづくり運動の経過等についてお話を伺いました。

公立幼稚園、公民館、市民球場など市民活動の拠点廃止の「改革ビジョン」(案)

 ―西端市政が生まれた経緯と市政改革ビジョンの内容を教えて下さい。

2011年夏に前の西口市長が辞職され、8月に市長選がありました。4月の統一地方選挙で再選されたばかりの市議・西端勝樹氏(無所属)が、大阪都構想を推進する維新の会の支援を受けて出馬しました。一方、維新系を除く広範な勢力の統一候補として教育長が対抗馬となり、関心の高い選挙となりましたが、約2万5000対2万票で、西端氏が当選しました。

新市長は、就任早々部長級職員を総入れ替えする露骨な人事を行いました。9月には、企画財政部局を中心とした行財政改革PTを立ち上げ、改革プランの検討を始めました。その策定過程は、現場を知らない管理職が作り上げ、担当課ヒヤリングも実態は通告であるなど職場民主主義を無視したものでした。そして、パブコメも市民説明会も経ずに、年あけの1月に「もりぐち改革ビジョン」(案)が「市長の思い」として発表されました。

その内容は、財政危機と学校耐震化のための財源捻出を理由として、市民会館、市民球場、テニス場、公立幼稚園5園の廃止、公民館(11カ所)・保育所の統合・縮小、保育料値上げなど、市民が作り上げてきた財産でもある拠点を大幅に削減し、負担を強いるものでした。

市民集会や公民館単位の地域集会開催で広範な市民・団体のネットワークづくり

―守口の街づくりを考える会はどういった経緯で結成されたのですか? また、どのような活動をされてきたのですか?

12年1月末に、民主団体を中心に結成総会を行いました。返信ハガキつきの全戸ビラで、改革ビジョンの内容を知らせたところ、多数のハガキが返信されてきました。2月25日に、市民シンポジウムを行いました。学校統廃合、老人福祉センターの入浴サービスの廃止、テニスコート・市民球場の廃止などの問題点が、登壇者から出されました。壇上ではいままでおつきあいのなかったテニス協会会長など幅広い人が発言しました。シンポは、市民に「改革ビジョン」の内容を知らせることを目的とし、市民と議会が声を上げることが重要だとアピールしました。

6月には、6000枚のステッカーを街中に貼り出し対話を通じて、町の雰囲気を変えることを目標にしました。

7月には、市民300人が集まり市民集会を行いました。第?部は、「幼稚園・保育所・学童保育を守る市民集会」として、第?部は、市の「出前講座」制度を利用して、「学校統廃合、改革ビジョン」ふれあい講座として行いました。

当局の担当者も出席して、ビジョン案を説明し、参加者の質問にも答えました。当局の担当者は財政赤字を強調しましたが、市職労委員長が質問したところ、以前からの給与カットなどで財政事情が好転し「累積赤字が解消」と認めざるを得ませんでした。

11箇所ある公民館では、700以上のサークルが活動していますが、6月から11月にかけて計6回、公民館の統合問題を中心とした地域集会を行いました。ビジョンでは、11カ所の公民館を2012年中に数カ所のコミュニティセンターに統合するとしています。守口市では、公民館と体育館と図書室が併設されていますが、それぞれ、年間27万人、21万人、貸出冊数5万冊と多くの市民に利用されています。職員は全館で約60名、3億円の予算で運営しています。当局は「費用対効果」を強調しますが、利用者にとってはそれぞれの公民館がかけがえのないものです。八雲東公民館では、2300人もの廃止反対の署名が集まりました。

市民球場・テニス場は存続、公民館の具体策先送り、市民課窓口業務の民間委託化提案撤回など大きな成果

―活動の成果を教えて下さい。

100%とはいきませんが、大きな成果を上げたと思っています。テニス場・市民球場は、先述のテニス協会長が廃止反対運動の先頭に立ったこともあり、存続することになりました。市長は一転「市民球場はプロ野球でも使えるように」と言いますが、方針がコロコロ変わる思いつきの行政の典型ですね。公民館の統合は2012年中を目標にしていましたが、統合の具体案すら出せない状況です。市民課窓口の民間委託案も市議会で削除されました。市民が学習し、声を上げ、行動した結果だと思います。

他方、老人福祉センターの入浴サービスは、4月15日に廃止が強行されました。また、市民会館は、耐用年数がないことから廃止が決定しましたが、廃止反対の署名やパブコメが提出され、「芸術文化の振興を標榜する多機能な施設を建設する」と市長が認めるようになりました。

運動や情報の「共有の場」の役割発揮

―今後の課題や展望についてお考えを聞かせて下さい。

市民に身近な拠点施設の統廃合問題では成果を収めましたが、ビジョン案の問題は、他にもあります。約200人の現業職員の削減もその一つですが、2012年夏の集中豪雨時には、消毒等の対応が遅れ、公務員の削減が市民のためにならないことも実感しました。公務員バッシングが市民の福祉につながらないことを理解してもらう必要があると思っています。

会の役割としては、運動の火付け役として、また情報共有の場として、市民が考え、意見を言える機会を提供することだと思っています。2013年5月には、社会教育にかんする市民フォーラムを企画しています。

―お話を伺って感じたことは、「改革」の内容を市民が学び、考え、声を上げることの重要性です。「改革」ムードへの期待から維新系市長が生まれても、学び考え意見を言う市民なら、改革が何をもたらすか、その本質を見抜くことができるということを守口の経験は示しています。このネットワーク型のまちづくり運動の広がりが期待されます。(文責 柏原 誠)

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