トップ  >  〔緊急声明〕「府市一体化条例」の拙速な採決を行わず、慎重な審議を求める [2021.3.15]

〔緊急声明〕「府市一体化条例」の拙速な採決を行わず、慎重な審議を求める

2021年3月15日
大阪自治体問題研究所理事会

現在開催されている大阪府議会及び大阪市議会に、「大阪府及び大阪市における一体的な行政運営の推進に関する条例」(いわゆる「府市一体化条例」)案が提案され、審議に付されています。

吉村府知事・松井大阪市長および大阪維新の会は、この条例を4月1日に施行するため、会期中に成立させることを目ざしています。

「大阪都」構想に代わる府市一体化条例提案

吉村府知事・松井市長と維新の会は、新型コロナウィルスによる感染症対策が喫緊の課題となった昨年の春以降も、「大阪都」構想の推進を最優先する姿勢を改めず、行政の資金や人員を大量に投入し続けました。府市一体化条例は、その「都」構想が昨年11月1日に実施された住民投票において否決された後、「都」構想の代替策として提唱されたものです。

「二重行政」解消を名目に、大阪市は廃止しないまでも、政令指定都市として大阪市が保有する一定の広域行政の権限について、この条例に基づき大阪府に移譲しようというのです。

「都」構想は昨年11月の住民投票で否決されました。しかし吉村府知事や松井市長は、賛成票も半数近くだとし、「大阪市民が『二重行政』の解消を求めていることも確かだ」などと言います。しかし、住民投票の結果が2015年5月に続く2度目の否決であることを考えると、吉村府知事や松井市長による民意の理解は、根拠の疑わしい手前勝手な主張というほかありません。

そして、府市両議会に提出された条例案は、以下で見るように、まず巨大開発の推進とその体制づくりを目ざしていて、喫緊の課題である感染症対策の広域的体制を整備することなどには関心が向いていません。維新の会がいかに巨大開発に執着しているか、ここに如実に示されています。

知事を本部長とする副首都推進本部会議への一極集権

この条例案の中で注目されるのは、第1に、副首都推進本部会議に条例上の根拠が与えられ、強固な仕組みを構築しようとしている点です。そのために、この会議において、大阪の成長・発展に関する府市の基本的方針や、この基本的方針に基づき策定する計画や方針等について協議すべきこととするとともに、合意事項についての進捗管理の権限をこの会議に付与しようとしています。こうした機能を持つ副首都推進本部の事務局体制も強化されると見込まれますが、その分だけ他の部署が手薄になることは避けられません。

都市計画権限の一元化により巨大開発が加速される

第2に注目されるのは、府市が広域行政を一体的に取り組むため、広域的観点からのまちづくり・交通基盤等に関する都市計画の権限について、大阪府が一元的に処理する方針が定められる点です。

「二重行政」の解消を名目に、従来は大阪市内について大阪市が有していた一定の都市計画権限を、事務の委託という手法によって大阪府に移し、大阪市外の区域にについて大阪府が有していた都市計画権限とあわせて、全て府の側に統合しようとするのです。

しかし、当然ながら、行政の権限を身近な地方公共団体に配分するという、地方分権の要請にも反します。また、都市計画行政の分野においては、もともと大阪市と大阪府は守備範囲が分かれていて、府市の権限が重なる「二重行政」は存在しません。

したがって、2棟の高層ビルなど機能の重なる施設を二重に設けるような「二重行政」による税金ムダ遣いの解消に、府市一体化条例は役立ちません。

ねらいは、大阪市内と大阪市外とで都市計画権限の所在が異なることで、巨大開発に関する計画の調整が滞り、事業が進まない事態を打開することにあります。そのため、府市一体化条例が制定されれば、必然的な帰結として、万博関連に名を借りた成算の乏しい巨大開発も抑制が効かなくなり、かえって税金のムダ遣いは加速されるでしょう。

府市一体化が将来さらに拡大する可能性

一方で、今回の条例案では、一元化されるのは、副首都推進本部会議の所管する大阪の成長・発展に関する方針や計画の決定と、都市計画法に基づく一定の権限に限られています。「大阪都」構想の協定書で予定されたような、大阪市のもつ多種多様な権限について、幅広く大阪府に移す定めにはなっていません。財源の移譲についての具体的な定めもありません。

それでも、安心するのは早計です。副首都推進本部会議で決定された方針や計画を実施するときの費用については今後の協議に委ねられる定めで、大阪市に過大な負担が課される可能性があります。

また、条例案の中には府市の一体的な行政運営のための諸手法が掲げられていて、将来的に、条例別表の拡張や別の条例の制定によって、大阪市の権限がさらに幅広く大阪府に移される可能性も示唆されています。これらの点は見落とされてはなりません。

吉村府知事や松井市長のこれまでの発言を踏まえると、府市一体化条例は、今後の大阪市から大阪府への大幅な権限移譲の第一歩と位置づけられます。将来さらなる権限移譲が進められた場合には、大阪市は、1つの地方公共団体として住民のための行政を自立して実施するだけの包括的な権限を失うおそれがあります。

党利党略としての府市一体化条例制定

一方、副首都推進本部会議はすでに要綱に基づき設置されており、条例案上に列挙された他の諸組織も設置済みのものばかりです。都市計画権限についての事務の委託も、条例の定めがなくても実行可能です。すなわち、府市一体化条例案に盛り込まれた具体的な内容のうちで、条例の制定を不可欠とする事項はありません。

それでも吉村府知事や松井市長が府市一体化条例の制定にこだわるのは、維新の会の看板政策である「都」構想が頓挫した後、維新の会の組織を維持し支持者をつなぎ留めるため、「都」構想に代わる新たな看板が必要だからと考えられます。

このような政治的意図は不当なものであり、二度にわたる住民投票での審判に背を向けるものと言わざるを得ません。

私たちは、こうした立場から、この条例案への、議会の構成に頼った拙速な採決は行わず、その問題点を含め、本会議で慎重な議論を行うことを求めるものです。

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