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「大阪都」構想を検討する法定協議会の運営正常化を求める声明

2014年8月1日
一般社団法人大阪自治体問題研究所理事会

 (1)「大阪都」構想(大阪市廃止と同市域での特別区設置の構想)を検討するいわゆる法定協議会の運営をめぐる一連の事態は、はなはだしく異常であり、制度設計に住民の多様な意見を反映させるという観点から、この事態はおよそ見過ごすことができない。

 (2)法定協議会は、本年1月31日の会合で橋下大阪市長による区割り案絞り込みの提案が否決された後、5か月以上も招集されなかった。しかし、7月に入ってからは3日・9日・18日・23日と矢継ぎ早に開催され、「都」構想の設計図に当たる協定書案が決定されるに至り、その案が総務相に報告された。まず、この日程が尋常でない。

 しかも、この過密日程を強行するため、維新の会は法定協議会から「都」構想反対派・慎重派の委員の排除を図った。法定協議会は、府知事と府議会推薦の議員(議長を含む)9人、大阪市長と大阪市会推薦の議員(議長を含む)9人、合計して20人の委員(会長を含む)で構成される。しかし、維新の会は、過半数を制する府議会議運委で府議会推薦委員のうち野党系の委員を強引に維新所属の議員に差し替えた。それに反発した市会が推薦委員9人全員を引き揚げ、その結果、7月に入っての法定協議会の会合は、会長を含めて出席した委員11人が維新所属の者ばかりとなったが、この事態もまた、極めて異常である。

 こうなるのも、維新の会が性急な「大阪都」移行に向けて勝手に描いた行程表からの制約による。すなわち、「大阪都」に移行するためには、法定協議会で協定書案を決定し、総務相に報告してその意見を受けた後、協定書を正式に確定する。そして、大阪府議会と大阪市会の承認議決を経て、大阪市の住民投票で過半数の賛成を得る必要がある。しかし、維新の会は退潮傾向にあり、来春の府議会・市会の議員選挙で「都」移行の是非を争点とし、あるいは、これら議員選挙と住民投票とを同時実施するのでなければ、退潮傾向からの逆転も「都」移行も見通しが立たず、日程が遅れれば遅れるほど「都」移行が困難になると見込まれるからである。

 しかし、反対論者・慎重論者が排除された法定協議会で拙速に協定書が作成されれば、「都」構想の制度設計について十分な検討がなされず粗雑さを残すとともに、多様な意見をもつ住民の間に理解が広がらないままの強引な「大阪都」移行となって、無用の摩擦や混乱が生じることにもなりかねない。のみならず、大阪市域における自治体の再編を検討する法定協議会で、大阪市民を代表する大阪市会からの委員が一人も出席しないまま、大阪市の廃止を含む内容の協定書が作成されるならば、そのような協定書自体の民主的正統性はいかにも薄弱である。

 (3)府議会の野党系会派議員は、法定協議会の府議会推薦委員について条例制定により維新独占を是正し会派ごとの議席比例配分に改めるため、連名で臨時府議会の招集を松井知事に求めた。しかし、松井知事は地方自治法の定めに反してこれを拒絶し、岡沢議長(維新の会所属)が、協定書案決定後の7月25日にようやく、府議会を招集した。そして、条例案は可決されたが、松井知事の拒否権行使により、最終的に不成立となった。松井知事も、市会の招集を同じく拒否した橋下市長も、「形式的には法律に違反しても、違法ではない」と居直っているが、法律を順守しない為政者の行為は、仮に「公約」の実現に資するとしても許されないのが法治国家である。3月の市長選の結果や将来の住民投票の結果いかんによっても、法律に違反した行為の違法性が阻却されるものではない。

 また、維新の会が6月25日に離党表明した3府議について速やかな会派離脱を認めないのも、府議会内の会派勢力が変わって特に議運委内の過半数を失う可能性を避けるためだという。これらはいずれも、府民の代表である府議会の正当な活動を、党利党略の恣意的な思惑からことさら妨げる行為と評価せざるを得ない。

 (4)現在の法定協議会の運営は、上述のように維新の会が反対派を強引に排除し、市会推薦委員が全員欠席したまま進められている点で、形式的には法の定めに従っているようでも、実質的には民主的正統性を欠き違法である。そのような法定協議会で協定書が作成されたとしても、それは維新の会が身内だけで作った公約の域を出ない。このような運営が続く限り、法定協議会の作業に多数の公務員を動員し、血税をつぎ込むことは許されない。当研究所は、法定協議会が早期に運営を正常化させ、「都」構想の検討にあたっては、住民の中に存在する多様な意見をふまえることを求めるものである。

(以上)

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