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レポート 府立病院の独立行政法人化は許さない

大阪府職労本部執行委員・日名 廣江

大阪府が府立5病院の「特定地方独立行政法人へ移行」方針を公表

 大阪府当局は昨年12月、府立の病院を府直営から切り離し、採算優先の独立行政法人へ移行する「府立の病院改革プログラム〜運営形態の見直し(素案)」を発表しました。

 この2月議会に定款を上程し、2006年4月に法人移行の予定で、府立の5病院を一法人とする「特定地方独立行政法人」へ運営形態を変更するというものです。

 府立の病院が採算優先の法人へ移行されると、府民サービスはどうなるのか、医療水準は維持されるのか府民の健康に関わる大きな問題です。

 府立の病院に「地方独立行政法人」が導入されると、全国で初めて都道府県レベルでの導入となります。さらに大阪府は府立の病院の独立行政法人化に続いて、試験・研究所などへの独立行政法人の導入、図書館の指定管理者制度への移行も検討しており、府立の病院の独法化は何としても阻止しなくてはなりません。

独立行政法人化のねらいは人件費削減

 大阪府は府立の病院を独立行政法人に移行させる理由として、「現行制度では60億円の不良債務が解消できず、医療機器購入や病院建替えが困難。優れた人材も確保出来ない。安定的な病院経営のためには地方独立行政法人が適切と判断した」としています。

 そして、「独法でしか出来ない改革」として(1)病院長の判断で弾力的に組織・職員配置の変更ができる、(2)医療職場に相応しい人事評価システムの導入が可能、(3)プロパー職員の採用、(4)独自の給与制度の見直し、(5)地方自治法に縛られない多様な契約方法、(6)予算科目や年度間で弾力的運用ができる会計制度など6項目をあげています。

 しかし、「職員の給与制度の見直し」以外は現行制度のもとで改善が充分可能であり、すでに経営改善努力がとりくまれているものもあります。

 しかも当局が5年間で19.4億円、10年間で38.7億円の削減を見込む「契約方法の創意工夫による削減―複数年度にまたがれば安価で購入できる」としている医薬品・材料費について、医療職場では患者さんの状態によって「安全で使いやすく、単価の安いもの」を日々比較検討しながら購入しており、当局が契約期限としている5年間にわたる特定業者からの物品購入は、医療現場に相応しくないばかりか、5病院5年分の莫大な契約をめぐり、特定業者との癒着につながりかねないおそれさえ危惧されるところです。

 結局のところ独法化の目的は、法人に移行する看護師・検査技師など職員の給料表を、「独立行政法人国立病院機構を参考に給与制度を見直す」と、5年間で20.5億円、10年間で55.4億円の効果額を見込んでいることからも明らかです。

 また事務部門のスリム化・委託の推進で、5年間で130人の事務職員、50人程度の現業職員を減らすとし(25、6億円の効果)、独法移行時の44億円の不良債務を第1期中期目標の5年間で解消するとしていることからも、いかに激しいリストラ・合理化がおこなわれようとしているかということです。

独立行政法人になると府民の受ける医療はどうなる

 府立直営の5つの病院(母子保健総合医療センター、急性期総合医療センター、成人病センター、呼吸器・アレルギー医療センター、精神医療センター)は、小児・救命救急・難治性がんなど民間では担いにくい不採算高度医療や、精神・結核・感染症対策など政策医療を行政部門と連携して府民に提供しています。独立行政法人になれば、「独立採算」による目標管理と成績業務主義で赤字を生み出さないように、「中期目標」「中期計画」にそって、仕事をする事になり、儲ける医療にシフトすることになります。

 大阪府は02年12月「府立の病院改革プログラム〜診療機能の見直し編」を発表し、「府立の病院が担うべき『広域行政医療』→精神科医療、結核医療、災害医療など16の医療課題の提供と府域の医療水準の向上」掲げました。成人病センターの看護師芝山光代さんは、成人病センターで行っている医療を次のように紹介しています。

 「リザーバーを血管に植え込み、定期的に抗ガン剤を注入する肝臓がん治療があります。一度植え込むと通院で治療でき、働いている患者さんには特に便利です。この治療は診療報酬も安く、技術も要するため民間ではあまりやられていません」

 採算を考えた治療・看護にシフトするとなると、府民が受ける医療はどうなるのでしょう。「儲からない診療科は縮小・閉鎖する」「差額ベッド代や保険で認められない材料費・薬品は患者さん自身から徴収する」このことは、医師会などが反対している保険が効かない高度先進医療―「混合診療」に拍車がかかることにもなります。

 これまで、保険証一枚で受けられた検査・治療がお金のあるなしで受ける医療内容に差が生じ、医療の公共性・公平性が大きく崩れる事につながります。

 昨年4月独立行政法人に移行した「旧国立病院」では、「外来では短時間パートや病棟からの応援看護師しかいなくなり患者さんとのトラブルが多い、病棟ではナースコールを押しても看護師がきてくれない」「入浴回数が週3回から2回に減らされた」など、患者サービスに影響がでてきています。何よりも働く看護師自身が疲れ切って「もう働き続けられない」と退職する看護師が増えています。

何としても府立直営で医療の充実を

 府職労の再三の要求により、12月中旬やっと開催された病院ごと病院事業局の説明会では、多くの職員から「なぜ独法化しなければならないのか。今の運営形態でも、充分改善の余地はある」幹部職員でさえ「医療の質はどうなるのか。充分な準備期間もないままむりやり独法化して大丈夫なのか」と府当局のトップダウンのやり方に怒りの声があがりました。

 府職労の呼び掛けに応え、全国の自治体病院や地域の医師会・開業医の先生からも、「公的病院の役割を果たして欲しい」と激励の声が多数寄せられています。地域の医師会長は「府下の医療基幹病院の役割をもつ、府立の病院を財政上の理由で独法に移行することは極めておろかなこと。民間では受け入れが困難ながんや難病の患者さんに対し日々の診察とともに、治療法の研究など行っており、採算を考えた治療や看護では患者サービスが低下する」と警鐘をならしています。

 府職労は、今2月25日開催の府議会に向け、「府立の病院の独法反対・医療の充実を求める署名」に全力を挙げています。地域・駅頭での宣伝、団体や自治会への申しれ、地元医師会・府会議員との懇談など「府直営だからこそできる医療」を訴えています。

 1月22日「独法ストップ、医療の充実を求める府民の集い」で結成された「府民の会」や病院ごとの「よくする会」結成が大きな力になってきています。

 引き続き宣伝や対話・懇談を強めながら、自治体のありかたと公共性を考える運動、府立の病院の独法化を許さない運動を強めていきます。

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