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分譲マンション問題は大きな社会問題 まちづくり・住宅問題のひとつとしていっしょに考えましょう

NPO法人 関住協世話人会代表 佐藤 隆夫

はじめに

 イラクへの自衛隊派遣・年金改悪等、超大型改悪政治の陰で目立たないかもしれないが、都市型住宅のあり方として、日常生活に影響の大きい分譲共同住宅(マンション)問題に是非注目して頂き、生活と都市問題の解決をめざす大きなうねりの中で、読者の方にもいっしょに考えて頂きたい。

 分譲マンションは全国的には約435万戸のストックがあると言われている。これは全住宅の約10%、持家だけで見ると16%ぐらいになる。

 1950年代の後半から景気対策の一つとして「無政府的」に建築され続けてきたマンションも、長引く不況と、既に世帯数を上回る住宅戸数、少子化の加速傾向から、造れば売れる時代を終えようとしている。

 しかし不動産業界と建設業界は別の戦略を立て、30〜40年で「老朽化」の業・官・政の合唱を強め、建替え促進の世論と受け皿づくりに力を入れている。

 分譲マンションの分野で起こっているここ数年の動きはそのことを物語っている。
 簡単だが、一通りこの間の動きを見てみる。

矢継ぎ早な法律改正
 2000年以降の主なできごとを列記すると、
1.2000年12月 マンション管理適正化法成立
2.2001年 3月 金融公庫法改正,修繕積立金の債権化
3.2001年 6月 マンション建替円滑化法成立
4.2001年 8月 マンション管理適正化法施行
5.2002年 4月 ペイオフ普通預金のみ全額保障を2005年3月まで延期
6.2002年12月 区分所有法及び建替円滑化法一部改正

1.マンション管理適正化法

 マンション管理関係法としては初めての議員立法であり、管理問題の基本に関わる規定をしたのだが、管理組合団体への事前連絡はほとんどなく、1983年の法務省が取り組んだ区分所有法改正の検討手続きに比べると、いかにも拙速主義のそしりを招くような審議と成立であった。

 施行後3年経過したら(2004年8月2日以降)、不備な規定の見直しが開始される。今から準備を急がなければならない。

 内容としては、
(1)マンション管理士を活用するように規定の中では示唆しているが、実態としてはどうか。
(2)管理業者は全部登録しないと営業できなくなったが、委託会社は管理業務主任者を置き、業務基準を守り業務をしているか。組合は把握しているか。
(3)資産管理は管理会社及び他の組合とも分別管理が義務付けられたが守っているか。
(4)基幹事務のうち、長期修繕計画作成や見直し又は大規模改修の企画と実施も組合との契約があれば受託できるが、トンネル委託にはなっていないか。

 等々、実態に基いて検討改善する事項があり、大規模改修の主体的取り組みを考える時、前記?は重視して対応をしなくてはならない。

2.建替円滑化法

 区分所有法の改正で、決議は区分所有者数と議決権の各々5分の4以上で有効(客観的要件は無し)。
 その後の建替事業推進に関する法律なので、注意点として、この法律は当該の組合員以外にデベロッパーやゼネコンでも組合員として建替事業に参加ができる道を開いていることを指摘するにとどめておく。

3.ペイオフの実施延期と今後

 本来の国会決議では、2002年4月からは定期性預金は1000万円とその利息、普通預金は2003年3月まで全額保障というものであったが、りそな銀行への公的資金注入問題との絡みがあったとの見方もあるが、施行直前に2005年3月まで普通預金は全額保障が延期された。

 マンション管理適正化法では管理組合にだけ特に声高に「適切な修繕を」と言いながら、修繕積立金を適正値へ引き上げることを言った。(まさか、借金の勧めではなかったのか。疑問は残る。預け先を細くされたら、利息を払って借金の選択も増えるだろうが、そうすると銀行には好都合なのだろうか。)

 関住協では2002年、署名用紙一次分5000人分を持って国会の政党を訪ね請願した。「1戸100万円までは政府の責任で保全する措置をとること」がその主旨である。

 今、住宅金融公庫法の一部改正をして、積立債権、「すまいる債」を売り出し、今後の預け先としては対応できるようになってきたが、これまで備蓄している資金の分散保全が大変な労力を伴うことになる。

 国も政党も管理組合運営を本気で組合主体でやるべきと考えるなら、資金集めとその保全の支援をして役員の苦労を少なくすることに配慮すべきではなかろうか。

4.区分所有法の一部改正

 今回の改正は、一部改正とはいっても重要部分が改正された。
 特に大規模改修との関係では、法17条の改正に注意しなければならない。

 その他、建替決議の要件撤廃やIT化の導入条項及び管理者の権限拡大などの重要改正もあるが、大規模改修に関して注意すべきは、

(1)法17条の改正により共用部分の変更であっても形状と効用が著しく変更されなければ普通決議でよいと例外規定を変えたこと。このことから議案の要領も出す法的義務は無いと勝手読みされて、大規模改修の合意づくりがおざなりにならないように取り組むべきことである。公正で合理的な根拠のある大規模改修の提案でなければ、提案者が誰であろうと組合員の圧倒的賛成は得られない。
(2)法30条の2項「規約は衡平に決められるべきで、一部等価交換とか、その他分譲時の検討抜きで決めた不公平な規約は是正すべき方向が示された」との規定を生かして、共用部分の見直しも当然に大規模改修に合せて検討される課題である。

 この後、現在は管理組合が自らのマンションを共同管理していくためのルール「マンション管理規約」改正の参考にすべく、標準管理規約の改正作業が国交省で検討されている。

 NPO法人関住協では、来る12月13日の規約問題懇談会を皮切りに、年明けから規約改正の考え方・規約の作り方交流会を開く予定。

(03年12月5日)

 ※私たちは、分譲共同住宅のことを通称として「マンション」と呼ぶのは仕方ないが、それを無見識にも「マンションの管理の適正化の推進に関する法律」で、法律用語にまでしているのは納得できない。mantionは日本語辞書には、「大邸宅」の意で、多くは中高層の集合住宅の俗な通称とある。アメリカでさえマンションとは言われない。condominiumである。民間分譲業者が購入者心理のくすぐりに使った呼称が広がった。

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