出版物  >  月刊誌(おおさかの住民と自治)  >  その他記事  >  新年のごあいさつ 安倍内閣の歴史反動政治と橋下「都構想」を超えて [2014年1月号より]

新年のごあいさつ 
安倍内閣の歴史反動政治と橋下「都構想」を超えて

大阪自治体問題研究所理事長・関西大学商学部教授
鶴田 廣巳

 2013年は前年暮れの総選挙において自・公政権が復活し、第二次安倍内閣の成立によって憲法改悪と民主主義の否定、国民の基本的人権をないがしろにする動きが強まるとともに、地方自治・地方分権の発展に対する後退姿勢が顕著となった1年でした。安倍内閣は、第一次安倍内閣の際に挫折した「戦後レジームからの脱却」にむけ戦後民主主義を「総決算」するかのように、時代錯誤的で歴史反動的な攻勢を強めています。

 第二次安倍内閣の特徴は、大胆な金融緩和・機動的な財政政策・民間投資を喚起する成長戦略を標榜するみずからの経済政策を「アベノミクス」と命名し、「デフレ脱却」を謳い文句にいかにも景気回復と日本経済の再建が実現するかのポーズをとることによって、民主党政権に失望した国民の票をかすめ取り、歴代の自民党政権のなかでも最悪というべき右翼的・反動的な政治を強引に推し進めようとしている点にあります。

昨夏の参議院選挙までは政権の右翼的本質を隠してもっぱら「アベノミクス」の喧伝に努める一方、民主党の惨敗によって「ねじれ解消」を実現するや、安倍政権はその本質をあらわにし始めました。国民世論に挑戦するかのような原発再稼働にむけての布石や海外への原発売込み、消費税率の引き上げ、「社会保障と税の一体改革」の看板すら無視する社会保障解体路線の推進、選挙公約さえ省みないTPP交渉での農業・国民生活破壊、国益売渡しにつながるアメリカへの大幅譲歩の動き、日銀総裁・内閣法制局長官・NHK経営委員などへの安倍取り巻き・「お友達」の起用人事、日本版NSC(国家安全保障会議)設置法の強行、平成の「治安維持法」である秘密保護法の強行など、国民の生活や権利を抑圧し、わが国の将来を危うくさせる反動的・反国民的な施策を次々と強行してきました。

安倍政権は、12年7月に自民党において決定した「国家安全保障基本法案」の成立も企図しており、これにより集団的安全保障への道を開くとともに、安全保障政策への地方自治体、国民の動員体制を法制上確立することを狙っています。これは事実上、憲法9条の空洞化であり、憲法の保障する地方自治と国民の基本的人権の重大な侵害に他なりません。

こうした一連の戦後体制の「総決算」の仕上げとして予定されているのが、道州制の導入であるといってよいでしょう。住民自治どころか、物言えぬ国民づくりと「世界で一番企業が活動しやすい国」をめざして安倍「構造改革」が積み上げられているのです。新しい年は、こうした安倍政治の反国民的な反動攻勢に対抗して、憲法擁護と民主主義の発展、地方自治・住民自治の充実、国民の基本的人権と生活保障の前進をどこまで勝ち取れるかが問われる年になるでしょう。

 大阪自治体問題研究所は、昨年、創立以来40周年の記念すべき年を迎えました。1970年代の黒田革新府政の時代に大阪における労働運動や住民運動の高まりに支えられ、公務労働運動や地域の住民運動と連携し、地方自治・地方財政の理論と実践の発展に努力してきました。そうしたなかで多くの研究成果を生み出すとともに、府下の多くの自治体における「白書づくり」運動や大阪研究所独自の自治体学校の開催、韓国、とりわけ釜山における地方分権運動やグリーン・コリアなど環境保全団体との国際的な連携・協力など、多彩な活動を進めてきました。1970年代の初め、「日本の夜明けは大阪から」と称されるほど、大阪における政治革新、地方自治・民主主義の発展をめざす運動はめざましい前進を示しましたが、私たちの研究所もその一翼を担って事業を進めてきました。

 残念ながら、70年代末に革新府政が保守府政に転換して以降、大阪における地方政治の革新は大きく後退することを余儀なくされました。とりわけ2008年に登場した橋下府政以降は、首長自身の人権感覚の欠如や地方自治・住民自治、民主主義に対する無理解、民営化・構造改革路線に対する絶対的信奉などにより、がむしゃらの公務員バッシングや住民福祉・住民自治に対する破壊攻撃が日常化するようになりました。「大阪維新」の動きは、一時期、国政をも左右するかのような「維新バブル」現象さえ生み出しました。その余波が第二次安倍内閣を生みだす一因となったといっても過言ではないでしょう。

 しかし、橋下大阪市政のもとでの思想調査アンケート、入れ墨調査問題、公務労働組合に対する敵視政策に始まり、府市統合本部を司令塔とする「大阪都構想」の推進や大阪市の「市政改革プラン」などによる大阪市解体、住民福祉施策の切り捨て、有無を言わせぬ幼稚園・保育園の民営化の推進などは大阪市民だけでなく府下の多くの地域で「維新政治」に対する疑問や反対を生みだすようになっています。昨年9月の堺市長選挙、11月の岸和田市長選挙での維新候補の大敗は「橋下神話」「橋下バブル」がはじける兆候を示したといってよいでしょう。

 今年は大阪都構想の具体的な区割り案や住民投票をめぐって一大政治決戦が予想されます。「大阪都構想」は虚構に基づく政治的資源のムダづかい以外の何物でもありません。住民投票を待つまでもなく、「維新政治」には可能な限り早期の退場を突きつけることが必要です。大阪自治体問題研究所は、大阪における地方政治の刷新と住民自治の発展にむけていっそう奮闘する所存です。

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