トピックス - 大阪大都市圏研究会からの報告 〜自治体企業誘致条例の「限界」を問う議論〜

大阪大都市圏研究会からの報告 〜自治体企業誘致条例の「限界」を問う議論〜

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活動速報
 2009/12/4 9:31

 2009年11月11日、第16回大阪大都市圏研究会が開催されました。


今回は、尼崎市の企業誘致についての研究会です。関西学院大学専門職大学院、経営戦略研究科非常勤講師・梅村仁さん(2004年、パナソニック尼崎工場誘致を担当された尼崎市都市政策課長・前産業振興課長)をお招きしての学習会となりました。


堺市では、巨額の補助金・税減免問題を抱えて堺浜シャープの企業誘致がなされたことから、大阪自治体問題研究所と堺市企業立地とまちづくり研究会は、『地方自治体と企業誘致』(大阪・堺市のシャープ誘致にみる問題点の分析と提言)を08年8月に発刊し、企業誘致への補助金・税減免・経済波及効果などの問題点を解明し、市民本位のまちづくりを提言してきたところです。


今回、梅村講師には、尼崎市における自治体の産業誘致(企業立地促進)施策の『限界』と、産業と都市との立地条件、都市政策がどのように関連し展開されてきたのか、率直な意見交換を行いたいとの趣旨で講演を依頼したものです。『工業集積地域の保全と企業立地』について、また、『産業振興策とまちづくり政策の融合』の具体事例と実際に生じた様々な問題点を語って頂きました。


現職の課長という立場ではありましたが、参加者からの質問に率直に応えていただきました。論点になったのは、尼崎市の企業立地促進施策の中心を占める結果となった松下プラズマディスプレイパネル工場の誘致です。自治体による都市間競争を煽った大企業誘致は、三重県からはじまりました。しかし、桁外れの補助金・税減免で厚遇したものの10年経たずに撤退を表明したいわゆる『シャープ・亀山ショック』がおこりました。その実態は、経済的にも社会的にも今日未だ解明されないままであると指摘されています。


亀山のシャープ誘致の後、尼崎のパナソニック工場誘致、堺市のシャープ誘致と自治体による大企業誘致が続いていますが、その間には、工場等制限法の02年廃止、工場再配置法の06年廃止といった国の産業政策に大きな転換が図られたうえ、自治体の財政危機がかさなったこと、さらに、自治体としての財政基盤確保・地域雇用の創出が求められてきたことが上げられます。


梅村講師は、市の取り組みとして都市内の中小企業を中心とした内発的発展論もあるが、尼崎市は03年から『都市経営の安定化』をめざし『産業立地課』を新設したこと。そして、04年からは『尼崎市企業立地促進制度』の運用を開始していること。この時期から、尼崎市は産業集積の再認識と外部からの活力導入で、『尼崎市産業の活力再生』に本腰を入れようとしてきた経過を強調されました。しかし、外部要因的施策として企業誘致活動の中心を大企業のみに重きを置いたわけではなかったと説明します。


東大阪市が取り組んだ市内の中小企業訪問や、他府県に出向いての企業訪問活動、アンケートも行い、主に関西地域の企業動向を把握し、立地検討企業には尼崎市職員が直接赴き、尼崎市内産業のピーアールを行ってきた。ベイエリアに残された関西電力跡地の誘致にパナソニックがきたという結果になったが、立地の最大の根拠は電力を使う産業でもある関電自体が立地を望んでいたこともあるのではないか。また、『尼崎市企業立地促進条例』は新規企業の誘致だけでなく、既存企業の増設・建て替えも対象にして、企業の市外転出防止にも役立てようとしたものであったと説明されました。


企業誘致へ自治体側条件(条例)を並行させたといわれる堺市と違い、補助金でなく税軽減(固定資産税・都市計画税・事業所税)の対象エリアも南部市域のベイエリアに限定せず、市域全域を対象エリアとした『尼崎市企業立地促進条例』との差は大きく、この点が堺市企業誘致施策との大きな差違になっていることが理解されました。


(文責・谷口積喜)

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