「大阪市残せ」の再びの民意をふまえ、住民の暮らし支える政治への転換を
- 11月1日の住民投票の結果をふまえて -

2020年11月2日 大阪自治体問題研究所 理事会

「大阪市廃止・特別区設置」を問う二度目の住民投票が11月1日に行われ、反対692,996票(50.63%)、賛成675,829票(49.37%)、その差17,167票で、大阪市の存続が再び選択されました。

大阪維新をはじめとした推進勢力が、コロナ禍を口実に、まともな説明も怠る中で、「大阪市廃止の可否」という重大な選択を迫られる中、大阪の現在と未来を真剣に考え、悩んだ上で、投票に参加されたすべての大阪市民の皆さんに、心から敬意を表するものです。

また、「大阪市をなくしたらあかん!」の民意を、二度にわたって突きつけた大阪市民の皆さんはもちろん、政令市廃止・地方分権への逆行という暴挙に危惧を抱き、大阪のたたかいに熱い支援を寄せていただいた全国の皆さんにも心からお礼を申し上げます。

投票率は62.35%と、前回を4.48%下回ったものの、この間の通常の各種選挙に比べると高く、大阪市民の皆さんが関心を寄せ、維新などの推進勢力が、市民からのまともな疑問や批判に対し「ウソ・デマ」攻撃を繰り広げる中でも、悩みつつ冷静に判断された結果だと考えます。

この結果、大阪市は存続することとなりました。私たちはおおいに歓迎するものですが、これだけを喜ぶことはできません。

第一に、維新勢力は基礎自治体と都道府県が互いに補完しあって住民生活に不可欠な行政サービスを提供するという当たり前のことについて、「二重行政のムダ」と決めつけて切り捨てを強行し、地域で困難を抱えた患者を支えていた住吉市民病院を廃止したり、大阪府一元化を口実に、障害を持つ子どもたちの発達を保障する大阪市独自の体制や予算を削減し、支援学校の教育環境を低下させました。

こうした機械的な「二重行政ムダ論」を改め、住民の暮らしを支える制度・政策を、大阪府・大阪市それぞれが全力をあげて進めることが求められます。

第二に、今回の住民投票の結果を受け、「大阪市廃止・特別区への再編」に向け準備していた予算や体制は不必要となりました。直ちに副首都推進局などの準備体制を解体し、準備予算を見直して、コロナ禍に苦しむ住民の生活や営業を支える人員や予算に充てることが求められます。

さらに第三には、今回の住民投票をめぐって、維新が配布するビラに連絡先として副首都推進局の電話番号を書き込み、説明に職員を当たらせるなど、行政私物化を一層進めるとともに、最終盤では「財政見通し」問題に関わって、市民に対する説明責任を果たす上で必要なデータを公表した職員に対し「撤回」を強要したり、報道した新聞社を名指しにした圧力が国会の場も使って公然と行われました。

こうした不当な職場支配や、民主主義否定を重ねる態度を直ちに改めて、住民の願いを誠実に受け止め、社会の批判に謙虚に対応することなしに、「住民や地域全体の奉仕者」(憲法15条第2項)としての役割を果たすことはできません。

また、コロナ禍のもとで、維新政治がこれまで進めてきた、IR・カジノやインバウンドに依存しきった経済政策も、根本から見直すことが重要です。私たちの身近にある優れたものや技術、環境を生かし、地域の中で循環・発展する経済政策への切り替えこそが今求められています。

今回の「大阪市存続」の市民の選択が、住民本位の新しい政治に向けた出発点です。私たち大阪自治体問題研究所は、「住民の暮らしをよくすること」「それを支える地方自治の民主的な発展をめざすこと」という役割を果たすため、皆さんとご一緒に頑張ります。

以上