2016年11月14日

大阪万博の夢洲での開催に反対する声明

大阪自治体問題研究所 理事会

 10月28日に、大阪府より「2025日本万国博覧会」基本構想(府案)が示されました。府案では、「人類の健康・長寿への挑戦」をテーマとして、2025年に夢洲での開催を目指すとしています。しかし、府案で示された内容には以下のとおり多くの問題点が含まれ、けして容認できるものではありません。万博の開催を急ぐ必要はなく、府案で示された夢洲での万博開催はいったん白紙に戻し、万博開催の是非も含めて、改めて府民の声を聞きながら議論を進めていくべきです。

1.府案では、カジノ型リゾート施設と万博会場が隣接する計画となっており、カジノと抱き合わせの万博になっています。むしろカジノ誘致のためのインフラ整備のための万博と言えます。しかし、府案が示した万博の発信するテーマ・メッセージとカジノは並立しないでしょう。なによりもカジノに対しては府民からの強い反対があります。したがって万博とカジノは分けて検討すべきものであり、カジノ誘致のために万博を利用することは許されません。

2.府案では、夢洲の埋立をすすめ、カジノ型リゾート施設をつくり、万博誘致と合わせたまちづくりを計画しています。しかし、1991年から事業を開始したにも関わらず、いまだに人も住まない、企業も立地していない場所に投資する意味がどれほどあるのでしょうか。先の万博の時代とは経済状況も大きく異なり、人口減少が進む現状においては、新規開発よりも既存の市街地に民間投資を誘導するほうが重要でしょう。

3.夢洲ほど万博会場として不適切な場所はありません。今、東京では豊洲の土壌汚染が大きな問題となっていますが、周知のように夢洲は廃棄物や浚渫土砂を埋めて造られた人工島であり、土壌汚染が懸念されます。しかし、これまで十分な調査が行われたことはなく、今回の府案でも、夢洲の環境問題に対する対策費は組まれていません。さらに、夢洲が不適切な理由はこれにとどまらず、地震への対応や液状化の問題、そして津波などの危険性も指摘できます。大阪万博が掲げるテーマである「健康・長寿」、さらにサブテーマとして掲げる「地球環境の保全と共生」ともまったく相いれないものです。環境に関してさらに言えば、府案では24時間開場や早朝・深夜への開場時間延長も検討するとしていますが、これらは大量のエネルギー消費をともない、温室効果ガス削減・脱化石燃料という世界の流れに逆行するものです。

4.総工事費について、府案では、会場建設費および関連事業費で総額2000億円程度と見積もられています。しかし2020年東京オリンピックが当初予算の6倍に膨れ上がって大きな問題となっているように、本当にこの枠で収まるかどうかは疑わしい状況です。またこれらの費用については国、大阪府・大阪市、そして経済界で分担するとしていますが、中身は決まっておらず、大阪府や大阪市にどの程度の負担が生じるかは不確定です。

 この投資に対する経済効果を府案では約6兆円と見積もっていますが、それは、3000万人という入場者数予測をはじめ、多くの効果の疑わしいものを見込んで計算するなど、甘い予測になっています。2005年の愛知万博が総工事費3460億円、入場者数2200万人、そして経済効果約3兆円と言われているのと比較すると、ほんとうにそのような効果があるのか疑問です。

 大阪府財政は、公債残高が6兆円を超え、2011年度決算で起債許可団体に指定されるなど、厳しい状況にあります。この背景には、期待された経済効果を上げることなく「負の遺産」となった多くの大型プロジェクトがあります。甘い予算見積と過剰な期待による計画は府民に新たな負担を生み出すだけです。

5.府案をみると、まず夢洲の活用ありき、カジノありき、そして万博ありきで、なぜ今、大阪で万博なのかという意味は読み取れません。むしろ、なぜ今万博なのかの答は、維新政治にあると考えます。この8年間の維新政治は、結局のところ、財政再建を理由とした市民向け施策の削減と民営化をすすめ、そして大手企業の収益を確保することでした。しかしこのような政治に目新しさはなく、大阪府の未来は見えてきません。そこで出されたのが「大阪都構想」でした。しかし、これは住民投票によって否決されました。また、推進しようとしているカジノも反対の声が強く、不透明な状況です。そこで新たに府民世論を誘導するために持ち出されたのが万博であったと言えます。このような単なる政争の具として拙速に決定された万博では、そのテーマは言うに及ばず、府民の納得した万博にはならないでしょう。なぜ今、大阪で万博なのか、もう一度そこから議論を始める必要があります。