2015/05/18

大阪市解体の住民投票が「反対」多数で否決の声明

大阪自治体問題研究所 理事会

 「大阪市廃止・特別区設置」を問う住民投票が5月17日に行われ、反対705,585票(50.38%)、賛成694,844票(49.62%)、その差10,741票で、大阪市が政令市として存続することが決定された。もし大阪市が解体されるようなことになれば、市民生活、経済に与える影響は甚大であった。「大阪都構想」反対運動を展開した様々な団体、個人にまず感謝申し上げる。

 投票率は66.83%と、過去10年間の選挙で最高となった。これはこの問題について、いかに大阪市民の関心が高かったかを示している。維新による物量作戦が展開されたが、大阪市民が「大阪都構想」に騙されなかったことは、今後の大阪に大きな展望を与えた。

 「都構想」がわからないという人の多さも特筆すべき特徴であった。出口調査によると、「反対」の理由に「よく分からないから」とした市民が少なくなかった。このことは市民に十分な情報と時間を保障せず、強引に投票に持ち込んだことに対する市民の反発を示している。今回の住民投票は憲法9条改正とも連動していた。そのような企みを阻止できたことも大きい。

 「特別区設置」が、大阪市を解体し、その財源を大阪府に吸い上げる事実をはっきりと報道しなかったマスコミの責任は大きい。また、橋下市長が敗れたにもかかわらず、未だに橋下市長を持ち上げているマスコミについて、報道のあり方に疑問を持つ。

 この間、思想信条の違いを超えて、「大阪都構想」に反対する様々な連携が築かれた。このような連携を基礎に、維新によって破壊されてきた大阪を再生し、今後を展望すべきである。また、「大阪都構想」に反対する若者たちの組織が急速に拡大したこと、「大阪都構想」に反対する市民が、HPの立ち上げ、手作りビラの地域配布をしたこと、商店街、医師会、地域振興会など様々な団体が「大阪都構想」反対の見解を発表したことなども今後の大阪にとって貴重な財産になるだろう。

 一方、出口調査で20、30代の6割超が賛成であることは留意する必要がある。閉塞感を覚える若い層が「大阪都構想」に閉塞感打開を期待した結果だと思うが、当研究所としても、若い人たちに未来に希望が持てる地方自治や日本のあり方について、研究を続けていく必要がある。住民投票が否決されたとは言え、維新の会は大阪府議会、大阪市議会で第一党である。府下の各市にも多数の議員を抱えている。維新の今後の動向に注意を払わなければならない。住民投票の結果に安住することなく、現存する多くの問題の解決に向けて大阪市・府の諸問題を解決する展望を示すことが当研究所の使命と考える。私たちは、今後もその使命を達成するため尽力する決意である。

 以上