子ども・子育て支援新制度に関連する条例策定等に対する声明

2014年8月1日
一般社団法人大阪自治体問題研究所理事会

 2012 年8 月、社会保障と税の一体改革関連法として子ども・子育て支援新制度関連3 法(以下、新制度)が成立した。これによって内閣府に「子ども・子育て会議」を設置し、新制度の内容を検討してきた。そして今年の4 月30 日、新制度の運営基準や職員・設備基準などの府省令を公布し、5 月26 日には利用料と公定仮単価表を示した。

 これからは国の示した基準を踏まえ、都道府県及び市町村が新制度を実施するために必要な運営基準や職員・設備基準を条例で定める。また、新制度を運営するのは市町村であり、市町村はそのための事業計画を策定する。さらに、実際に徴収する保育料は、市町村と各施設が決める。

 新制度は、幼稚園や保育所、学童保育をサービス業に変えようとするものであり、子どもの発達保障という点では大きな問題を持っている。一方、新制度では自治体の権限が大きく認められているため、自治体の姿勢によっては、新制度の弊害からその地域の子どもたちを救い、適切な幼児教育、保育を提供することがある程度可能である。

 新制度の実施は来年の4 月だが、それまでに都道府県、市町村がどのような条例、事業計画を策定するのか、保育料をどのように定めるのかが、子どもたちにとって非常に重要な問題となる。その点から以下の5 点を要望する。

(1) 新制度に移行しても、現行基準より低くならないように条例等を制定すべきである。保育所等の状況は市町村によってばらつきがある。府省令をそのまま引き写したような条例を策定すると、現行の基準を下回る地域が生じる。たとえば、堺市は「国基準通り」としたため、2008年より実施してきた堺市家庭的保育の基準を下回る条例となっている。少なくとも新制度以降によって保育環境が悪化することは避けるべきである。同時に、保育料も現行より上がることがないようにすべきである。

(2) 府省令で示された基準は低いため、市町村の策定する条例で、一定の歯止めをかけるべきである。たとえば、家庭的保育事業や小規模保育事業B 型、C 型の資格等については問題が大きい。そのため茨木市は「家庭的保育者のうち1 人は、保育士資格保有者とする」とし、小規保育事業B型についても、1 歳児保育5:1(府省令では6:1)の基準を示している。

(3)保育所や学童保育の現状は十分ではない。新制度移行をきっかけに、可能な範囲で水準を引き上げるべきである。確かに既存施設等との関係で基準を引き上げることが難しい場合もある。そのような場合でも、改善への展望、スケジュール、自治体がどのように支援するのかを事業計画等で示すべきである。

(4)新制度移行を公立施設の廃止につなげないようにすべきである。新制度は子育て支援を充実させるための制度であり、新制度移行によって公立施設を廃止する必然性はない。公立施設のあり方については事業計画等で十分議論し、新制度の移行と共に公立施設の充実を図るべきである。

(5)条例制定等にあたっては関係者の意見をできる限り踏まえるべきである。大半の自治体は9月議会で条例を制定する予定である。来年4 月実施のため、十分な時間を保障するのは難しいが、可能な限り、関係者から意見を聴取し、それを踏まえた条例、事業計画を策定すべきである。

(以上)

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