次回研究会は、2016年9月21日(水)pm6:30〜
富岡良啓著「税金を払わない巨大企業」をテキストに研究会を進めてまいりましたが、次回に終章まで終わらせ、以降は増井良啓著「租税法入門」をテキストにすすめていく予定です。


鶴田廣巳(関西大学)

 このたび、大阪自治体問題研究所における自主研究会として2015年6月に「税制研究会」を立ち上げました。すでにこれまでに5回の研究会をもち、活発に議論しています。ほぼ月に1回程度のサイクルで研究会を開催しています。立ち上げたばかりですので、まだ徐行運転ですが、若手の気鋭の研究者が著した話題の書である、『租税抵抗の財政学』(佐藤滋・古市将人著、岩波書店、2014年)を取り上げて読了しました。新年からは志賀櫻『タックス・ヘイブン』(岩波新書、2013年)を取り上げることにしています。

 今日、日本の財政は先進国のなかでも最も深刻な状況に立ち至っていますが、政権与党が進める財政運営は旧態依然とした開発型、利益誘導型の枠組みを維持したままであり、歳出改革について消極的であるだけでなく、財政再建にも真摯に取り組もうとする姿勢は見出せません。財政規律を弛緩させたまま、消費税率の引上げのみに依存する増税路線では、国民が望む財政再建も国民生活の安心・安全も実現できないことは明らかです。

 他方では、近年、タックス・ヘイブンなどを利用した多国籍企業による巧妙な利益操作により、各国の課税権が浸食される事態が明るみに出され、G20の後押しも受けてOECDを中心に「税源浸食と利益移転(BEPS)」の取り組みが開始され、2015年秋には15の行動計画に関して報告書がまとめられ、公表されました。今後はその具体化が図られることになりますが、そのゆくえは決して予断を許しません。

 アメリカのサブプライム・ローン問題に端を発したリーマン・ショックの後、ヨーロッパではソブリン危機が深刻化し、これまで世界経済をけん引してきた中国など新興工業国においてもバブル経済の懸念が高まるなど、世界経済の不安定はかつてなく高まっています。深刻な経済不況に対処するための巨額の財政出動によって各国は巨額の財政赤字を出す一方、金融の超緩和により過剰な資金が世界にあふれ、金融と経済の不安定性は高まる一方です。

 日本もまたその例外ではありません。第二次安倍内閣は「3本の矢」と称して、金融の異次元緩和、機動的な財政政策、成長戦略を進めていますが、アベノミクスが大失敗に終わり、格差と貧困、経済と財政の深刻な危機に直面することは疑いないところです。

 本研究会は、地方財政・地方税も含めて、日本と世界における税制や財政のあり方をさぐり、改革に向けて政策提起を行うことをめざしています。

 このような問題に関心を持たれている方はどなたでも自由に、また積極的に参加していただくことを期待しています。

 新しい年が希望の年となることを願って!

2016年1月