研究所第31回定期総会開催
  ―現代的地方自治の大きなうねりを!

現代的地方自治の構築を

 6月5日(土)午後3時より、(社)大阪自治体問題研究所第31回定期総会が、大阪市北区天神橋の大阪グリーン会館2階ホールで開催されました。総会には48名の会員が出席、書面出席(委任状)を609名、計657名の出席で、定款上の成立条件を満たしました(定足数は555名)。

 初村尤而理事が開会を宣言し、森裕之理事(立命館大学)、神田美佐子氏(大阪府職労)が議長に選出され、議事がすすめられました。

 開会あいさつにたった重森曉理事長は、2月16日から取り組んだ「会員拡大集中月間」の成果を報告。150名の目標にたいし、会員85名、読者21名、合計106名に到達。自治体労働組合の取り組みでは、門真が16名、大阪市が7名、吹田市が6名。新しく入会した会員にとって、よかったといってもらえる調査研究・学習教育活動を発展させることを強調。地方自治をめぐり、地方独立行政法人や指定管理者制度など民間委託、民営化、市場化が急速にすすみ、他方では市町村合併から、府県合併、道州制にすすもうとしている。現代的地方自治を押し出していくことが重要で、それは3つの特長をもつ。(1)憲法の中に地方自治の原理が盛り込まれ、生存権、学習権、労働権などの基本的人権を地域で守っていくという仕組み、(2)住民から選ばれた首長や議員はもちろんだが人権を守る専門労働である公務労働によって地方自治が担われているという仕組み、(3)租税だけでなく全国的な財政調整制度によってナショナルミニマムを地域で保障するという仕組み、ここが古典的近代的地方自治とちがう。三位一体改革のなかで義務教育費、生活保護費などの国庫負担金制度が崩されるならば、ナショナルミニマムを地域で保障するという現代的地方自治の意義が大きくくずされることになる。

 03年度の取り組みでは、関西地域問題研究会が『関西再生への選択』を出版し、さまざまなところで活かしていただいている。昨年の総会での宮本議員の発言で始まった町村自治確立研究会も議員の熱心さと若手研究者によって支えられ、近々出版の運びとなっている。実り多い1年となるように熱心な討論を期待したい、としめくくりました。

 各議案については6月号、7月号(本号)に掲載されているので省略します。

 第1号議案(2003年度事業報告)、第2号議案(2003年度決算)は、木村雅英常務理事が報告。

 会計監査は、宮武正次監事が報告。

 第3号議案(2004年度事業計画)は中山徹副理事長が提案。第4号議案(2004年度予算)は木村常務理事が提案、第5号議案(役員改選案)は、鶴田廣巳副理事長が提案しました。

熱心な討論

 つづいて、討論に入りました。各討論者の発言要旨を以下に紹介します。

◇尼子 美子さん(門真市職労)
 会員拡大では10名の目標を超えて16名の会員と1名の読者を拡大した。その多くは4年間の地域調査を通じて結びついた人たち。地域でがんばっている人たちや調査に携わった若手労働者に声をかけて応えてもらった。

◇中村 晶子さん(堺市職労)
 美原町との合併問題で住民投票の直接請求に取り組んだ。法定数の2・5倍の31915筆の署名が集まった。きっかけは「住民が知らんままに市の将来が決められることは許せない」というころで、女性を中心とする市民運動に支えられた。住民自治の学校のような運動で、住民自身が決定に参加したいというすばらしい取り組みだった。上田先生や初村先生の本などをテキストにした。日頃は「住民との協働」を強調する市長や議員はこの願い葬り去り「ホンモノ」ではないことがはっきりした。

 住民自治・住民参加の仕組みづくりをテーマにした研究会をつくってほしい。
 もっと研究所の輪を広げたい。拡大もがんばりたい。

◇佃 孝三さん(岸和田市職労)
 岸和田市は、財政再建と忠岡との合併との2つの問題に面している。自治体職場の中は、時代の転換への焦りと閉塞感があり、展望をもてていない。しかし他方では住民参加・協働のうごきがある。アクションプラン3ヵ年で人事考課制度や学校給食等の民間委託がいわれ、他方では住民参加で、財政危機と住民参加等の行財政システムの改革が渾然一体となっている。忠岡町との合併は合併メリット・デメリット、合併理由が明確に示されないまま手続きがすすんでいる。5月12日の協議会では、議員の在任特例、しかも町長まで2年間の身分保証を言い出して紛糾し、岸和田側の委員は失望し、次の目途も立っていない。行き先のない電車に乗った感がする。財政再建は回避されたのか、しかし市民との協働もすすんでいる。白書の課題はあるが、悶々としている。

◇岡野 政俊さん(大東市職労)
 市政調査では研究所にお世話になった。市長選挙は4月で、11月から取り組み何とか冊子をつくることができ、役に立った。現市政がおこなった公立保育所民営化にたいして、強い批判はあるが、それだけではたたかえないので、市政全体の状況を理解しながら政策の大きな柱に取り入れた。一定の批判票は取り込んだが限界。学習を力に今後も取り組んでいきたい。

◇黒田 充さん(研究員・自治体情報政策研究所)
 研究所のHPは1999年の総会前に開設し、現在アクセス数は25000件、1日平均14~15件。しかし、5年間で環境は大きく変わっており、今後どうしていくか考えていく必要がある。研究所の情報発信では『おおさかの住民と自治』、研究年報や刊行物、メールニュース、HPなどがある。それぞれの役割分担、情報提供のあり方を考え必要がある。理事会で検討してほしいし、自分も参画したい。

 府民データ・財政データのCD-ROM化はたしか98年におこなった。情報を更新していくことは賛成、方針化し一定の経費を計上すれば、以前ほどデータ処理が困難ではない。

 研究課題として住基ネット・電子自治体をあげたことは研究所では初めて。政府は電子政府は、電子自治体化をしゃにむにすすめている。2003年e-Japan、政府はアウトソーシングで、自治体の空洞化、小泉構造改革、電子化はNPMと親和性があり、かつ新たな公共事業となり、また個人情報の集中化を可能にする。この問題をたんなる利便性などと小さくみてはならない。

◇遠州 尋美さん(大阪経済大学)
 関西地域問題研究会の事務局として、『関西再生への選択』の出版にあたっての協力に感謝し、ひきつづき普及をお願いしたい。6月12日に新しい研究へのスタートとなる合評会をおこなうので、事務局として手を尽くしてほしい。合評会では、杉原五郎、植田浩史、高橋進氏の各氏に話してもらう。電子自治体の問題も一つテーマではないか。

◇宮本 吉雄さん(能勢町・議員)
 昨年の発言によって始まった「町村自治確立研究会」は有意義な研究会で、自分にとっても財政問題は何となく見えてきた。4月に原村で開かれた「小さくても輝く自治体フォーラム」にも「なにわ応援隊」として参加し、楽しい時間をすごせた。今後も下水道、広域行政、まちづくりなど共通テーマを取りあげて研究会を続けてほしい。

◇藤原 一郎さん(大阪市労組)
 大阪市は関市長になって、経営企画室と危機管理室を新たに設けた。有事と災害をセットにしている。有事法制、有事テロ、危機管理問題を取りあげてほしい。

 NPMにたいしては、対抗軸を明確にして行政論や運動論を展開すべきであろう。市町村合併は対岸の火事だと思っていたが、いまやさいたま市、静岡市のように政令指定都市の大量生産がおこなわれ、さらに道州制にむかっている。福祉施設などの専門職のアウトソーシングはすでに始まっているが、いまや事務部門のアウトソーシングにすすんでいる。 市労組は今年10月に自治研集会を開くが、それは市労組の冠をつけず「大阪市地方自治研究集会」にしようと考えている。そしてテーマを基本的人権、福祉、民主主義の3つのする予定。

◇藤永 延代さん(おおさか市民ネットワーク)
 きょう6月5日は「世界環境デー」、しかし研究所の情勢や事業計画では環境問題の押さえ方が弱い。自分としては「環境自治研究会」を立ちあげたいし、自ら事務局の責任をもつので、大いに参加してほしい。

 最後に、木村雅英常務理事がつぎのような総括答弁を行ないました。

 いずれの発言も、積極的にそれぞれの力をもちより、研究者、自治体労働者、市民活動家が渾然一体となって会員自ら地方自治の民主的発展のために研究所を通じて力をつくそうというものだ。一つ一つの意見に対するコメントは差し控え、理事会にかけてその実現を図りたい。

 今年の「自治体学校」(8月7〜9日、静岡市)、「おおさか自治体学校」(9月4〜5日、堺市)、そのいずれも公共性を真正面から取りあげるものであり、積極的に位置づけて成功のために力を貸してほしい。

 議長より、各議案の採決の提案がおこなわれ、反対意見がないので拍手によって採決され、すべての議案は圧倒的賛成によって採決されました。

 閉会あいさつは、後藤田弘副理事長がたち、今回副理事長を退任するが、残り1年は自治体労働組合運動に携わるので、今後は下から支えていきたい、また、小泉構造改革は、道州制や憲法にも手をかけてきた。まさに転換期で、持続可能な社会づくり、どういう社会をつくるのか、大きく打って出たい。会員拡大とともに取り組んでいきたい、としめくくりました。

(文責 事務局 織原 泰)

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