紛糾した合併推進決議 ―河内長野市との合併問題(千早赤阪村合併問題)

千早赤阪村在住 鈴木鉄雄

突然出された合併問題

 千早赤阪村村長は、07年4月12日の議会全員協議会で、「今後の村のあり方について」の説明をおこないましたが、「村のあり方」とは言うものの、内容は来年4月に河内長野市と編入合併をするというものでした。村長の説明では、土地の売却がうまくいかず、交付税の減、府の振興補助金の減などのスピードが早く、村の行革が追いついていかないので単独行政がむつかしくなった。来年4月1日を目途に河内長野市との合併をするというものです。そして村は、厳しい行財政運営の中、住民に村の現状を理解してもらい、今後の村のあり方について、村内13地区で4月19日から5月11日まで各会場とも午後8時から2時間程度の説明会をしました。

 村の財政危機は、村長も認めていますが小泉構造改革によって交付税や補助金などが削られたことが最大の原因です。村は、平成17年度から「元気プラン」によって住民サービスを削ったり、公共料金の値上げなどをしてきました。さらに国が指導してきた「集中改革プラン」にもとづいて、村独自の財政再建計画を進めていますが、平成21年度までの5年間で5億5000万円の住民負担とサービス低下を計画しています。

 財政再建団体転落の説明も当初は平成17年度になる、次に平成19年度になると言っていましたが、今は平成22年度になると、ころころ変わってきています。これは、行革によって財政の赤字が減った結果に他なりません。

大阪府の押しつけ合併

 合併について村は、住民説明会でも大阪府の斡旋によることを盛んに強調しています。大阪府の担当者も「賢明な選択だ。合併は避けて通れない」(5月15日読売テレビ)とのべています。昨年7月に発表した「市町村合併推進審議会」の中間答申でも1万人以下の町村は合併しなければどうなっても知りませんよと言わんばかりの説明をしています。府の担当者が村の区長会に出かけていき、合併推進の説明をし、「私を男にしてください」と頭を下げています。要所要所に府の担当者が村に来て指導をしています。地方自治はどこに行ってしまったのかと情けなくなります。そして大阪府は、どうしても合併させると躍起になっているとしか見えません。

村民の反応は

 「大阪府唯一の村消える?」というマスコミ報道がされて、共産党村会議員団のところに「どうなってんの?」「村がなくなるというのは本当か?」という問い合わせや「この際、村長になって欲しい」などという意見も寄せられました。

 村の各地区で村民への説明は、財政的にやってゆけなくなった、夕張市みたいにならないために、黒字のうちに合併をしてもらう、そのために来年4月を逃せないというものでした。「村長がやってゆけないと言うなら合併しかない」という賛成する人や「何で急にそんなんになったのか」「村のままでやって行けないのか」など様々な意見が出されました。

 地区によって出される意見もちがってきました。森屋地区などは日常的に富田林市とのつながりが強いところですので、何故河内長野市かという意見も出され、小吹台などでは富田林市との合併では反対の声が圧倒的に多くありましたが今回は賛成の声も出ています。

 12地区のうち9地区は区長がまとめで「これでいいですね」など挨拶しましたが、森屋、小吹台、中津原では、多くの意見が出され区長の挨拶も賛成、反対の方向を示さないものとなりました。特徴的な意見は、合併に賛成の人も反対の人も余りにも急で強引な進め方には疑問を呈し、村民の意見を集約する住民投票には賛成の意見でまとまっている事でした。

 村は、説明会を準備する段階で各区長に最後のまとめで賛成する方向でまとめて欲しいと要望しましたが、人口の7割を占めるところで村の意向どおりにはなりませんでした。

河内長野市と直接話したことがない ―特別委員会

 5月18日に村から議員全員協議会で説明会の報告がありました。村長は「延べ865人が参加し、財政再建団体転落の危機的な財政状況下では『合併やむなし』の意見が多く寄せられました。合併反対もわずかながらあり、住民投票を求める意見もありましたが、村全体として総合的に判断した結果、概ね理解いただいたものと考えている」と述べました。

 議員からは、説明会での村長の説明に矛盾があることや、財政再建に取り組んでいる最中での合併は再建計画を投げ出すのか。住民投票やアンケートを求めることなど、さまざまな質問があり合併問題を議論する特別委員会の設置を決めました。

 千早赤阪村の全議員で構成する合併問題特別委員会が6月4日(月)と10日(月)にくすのきホール会議室でおこなわれました。委員長を除く全議員が村当局に見解を質しました。共産党の徳丸議員は、河内長野市の誰と何時話をしたのかを詰めたところ、村長からは「大阪府と話をしているので大阪府を信じている」と答弁があり、河内長野市とは直接、誰とも話をしていないことがわかりました。

 関口議員は、村長が議員の時に出したビラで場合によっては住民投票も考慮すると言っていたのに今回何故しないのかと質しました。

 野上議員は、財政破綻というが、退職者債など今ある制度使うことや臨時財政償還費は国が返すもので実質村の借金ではないことなどを考慮すれば赤字幅が大幅に減るのではないかと質しました。

 傍聴しての感想は、合併推進を表明した議員も、地区説明会がお粗末な資料で進められたこと、来年4月という余りにも拙速なやり方に苦言を呈し、なぜ合併推進を表明するのか疑問に思う議論展開でした。

注目された村議会本会議

 6月議会の最終日の22日は、合併推進決議案が出され、議決するかしないかと合併問題が大詰めを迎えるというので、新聞、テレビのマスコミも大勢駆けつける中で開催されました。

 議会内の勢力は、合併推進派5人、反対派5人と真二つに割れていました。推進派が議長をしていたのでこのままでは推進決議は否決されるというので、匿名の手紙を各議員に送りつけたり、職員組合や互助会を名乗り議員に推進の要請する、区長の推進署名を集めるなど様々な圧力を議員にかけてきました。しかし、本会議開会までこの勢力は変わりませんでした。

 当日の冒頭に貝長議長が突然辞職したので議会が混乱しました。議長は「合併協議の推進を求める決議」を通すためにおこなった暴挙です。新しく豊田議員が投票により選出されましたが就任を拒否、その後、指名、起立による議長選挙を8回行いましたが、決まらず、共産党の副議長が議事を進めることになりました。

 その結果、決議は、賛成5、反対4の僅差で可決されたものです。議会のルールでは、先議の議長選出で全員が辞退し、候補者がいないときは副議長が議事を進行することになっています。副議長をもつ日本共産党はこのルールに従ったものです。

 共産党は、村がなくなるかもしれないと言う重大問題ですので、住民投票で村民の意見・態度を決めるべきと住民投票条例案を提案しましたがこれも否決されました。

 7月3日に臨時議会が開催され貝長議員が再度議長に選出されました。「合併の推進決議」を辞職までして通しておきながら、また議長に。「党利党略もはなはだしい」という意見も寄せられています。議長職を投げ出したものが、またのうのうと返り咲くとは、住民から見れば、あきれてものがいえません。

合併協議会の立ち上げなど今後も続く

 推進決議は議会の意思を表すものとして重いものがあります。法的拘束力はないとか、協議会立ち上げ後も意見を言える場があるなどの意見もありますが、推進決議が通ったことにより山を越えたように見えます。その後、反対していた議員2名は賛成派と行動を共にして大阪府への要請にも行っています。

 現状でも、財政的に村長がもうやってゆけないのであれば仕方がないという人が大半で、村がなくなるのは寂しいと多くの方が思っています。小さくても輝く町村が全国に沢山あり、町村長が行政を投げ捨てるのでなく、率先してまちづくりの先頭に立っている事例を村民に知らせることや村の中でいきいきと活動している村民を信頼し、そのエネルギーを引き出せば自立の道も可能なことなどを知らせていきたいと考えています。

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