地方分権と草の根民主主義の発展にむけて ―『おおさかの住民と自治』誌 第300号を記念する―

社団法人 大阪自治体問題研究所  副理事長  鶴田 廣巳

 大阪自治体問題研究所の機関誌『おおさかの住民と自治』が、通巻第300号を迎えました。第1号が創刊されたのは1973年8月、わが大阪自治体問題研究所が設立されてまもなくのことでした。以来、着実にその歩みを重ね、とくに1992年10月からは月刊のニュースレター(二つ折4ページ)と季刊の特集号(48ページ)とを組み合わせていくようになり、編集内容をいっそう充実させてきました。読者の皆さんに支えられて、今日では、名実ともに大阪における地方自治、地方財政と住民自治に係わる幅広い情報提供、情報交流のメディアとして定着するまでに成長してきたといってよいでしょう。

 とりわけ特集号の編集内容の充実ぶりは、目をみはるほどです。そのときどきの重要な課題にこたえる貴重な論考を収めた特集のテーマは、地方自治、地方財政に関するものはいうに及ばず、子育て、まちづくり、介護保険・地域福祉・社会保障、ごみ問題、中小企業政策、公共事業・地域開発、住民運動、第3セクター問題、大阪の文化、大阪の雇用問題、大阪の環境問題、大阪の公衆衛生、大阪の水問題などきわめて多岐にわたっています。その内容も、理論的な研究から現場報告にいたるまで大変多面的です。こうした特集論文のほかに、「ジャズマンは語る」「世界の港から」「文学作品から見た都市大阪」「大阪の川景色」「大阪橋ものがたり」など大阪の風物詩を中心に軽妙なタッチで描き出す記事が連載され、その多彩な内容を心待ちにしている読者の皆さんもたくさんおられるのではないかと思います。これもひとえに、取材を重視して草の根の運動に焦点をあてようとする編集委員会の努力のたまものといってよいでしょう。

 いま、地方自治、地方分権をめぐる動きは、小泉「構造改革」のもとで進められているいわゆる「三位一体の改革」によって、重大な転換期にさしかかっています。政治が全体として保守化するなかで、平成の大合併と広域行政、新中央集権国家の方向をたどるのか、それとも地方自治・地方財政の抜本的改革の道を切り開くことができるのか、私たちの前には厳しい選択が迫られています。わが大阪は、日本の地方自治運動のなかでもひときわ光彩を放つ歴史と文化、伝統をもっています。大阪が黎明を切り拓けば日本の地方自治と民主主義の未来にむかってのみちのりが指し示されるでしょう。『おおさかの住民と自治』が、読者の皆さんとともに大阪における地方分権と草の根の民主主義の発展に寄与できるよういっそう紙面を充実させ、読者参加型、相互交流型の広場を提供していくことを期待します。